「株式会社鳥取最上インクス」は京都に本社を構え、創業70年を超えるモノづくり企業「株式会社最上インクス」のグループ会社として5年前に設立された会社です。
今回は鳥取最上インクスと親会社の最上インクス両方の社長を務める鈴木さんに、鳥取県に進出した理由、鳥取最上インクスが目指す先について伺いました。
山陰を盛り上げたい、世界に必要とされる仕事がしたい、そんな方の願いを叶えてくれる環境です。
―鳥取最上インクスの創業経緯を教えてください。
鳥取最上インクスは京都に本社を構える最上インクスのグループ会社として5年前に生まれました。
グループ全体で金属部品の製造を行っており、京都本社が開発や営業、販売を担当し、鳥取最上インクスは金属部品製造現場として試作品・量産品の製造を専門で行っています。
―大きなグループの1社ということですね。試作品製造は珍しい仕事ですね。
試作品製造の仕事は「製品の実現化」と言い換えることができます。私たちの暮らしを豊かにする自動車や家電製品は、様々な金属部品から作られています。
こうした商品はメーカーの開発部や技術部のアイデアをもとに、試作品を製造し、様々な適性検査・試験を乗り越えて商品化されます。
当社ではそうしたメーカーの依頼を受け、試作品に組み込まれる金属部品の設計・製造を行っているんです。実際に商品化が決まった場合は量産品の製造も引き受けています。
―強みを教えてください。
当社は日本有数の金属加工技術を持っているので、他社では難しい微細で複雑な精密部品の製造ができるという強みがあります。
その技術力の高さから、日本国内の大手メーカーだけでなく、海外からも試作品製造の依頼をいただくこと多いです。
―なぜ京都から離れた鳥取にグループ会社を設立されたんですか?
試作品、量産品の製造は元々京都で行っていたんですが、事業拡大とともに手狭になり、新たに工場を建てる土地を探していました。
そんな時に当社が仕事を依頼していた鳥取の会社から買収提案を頂いたんです。それが鳥取最上インクスを設立するきっかけになりました。
―なぜ買収案が出てきたんですか?
その会社のオーナーが高齢で体調も悪く、娘さんが会社を継いでいたんですが経営がうまくいっていなかったようです。そこの会社も社員がおり、生活を守る上で他社への売却を望んでいました。
そこで以前から繋がりのあった当社に相談が来たんです。実際に会社を見に行くと、工場は平成に建てられたもので綺麗な状態でしたし、設備もそのまま使える完璧な物件でした。
そこで買収案に同意し、働いている社員の雇用も引き継いだんです。
―鳥取最上インクスを設立してから事業はすぐに軌道に乗ったんですか?
元々は工場を0から建てる予定だったのに対し、工場や設備ごと引き受けることができましましたし、製造業の経験がある社員も引き継いだので、設立後の事業はスムーズに展開することができました。
しかし、苦労したこともあります。それは鳥取の会社から引き継いだ社員の方々に最上インクスの企業文化を受け入れてもらうことです。
―最上インクスの企業文化はどのようなものですか?
社員一人ひとりが主体性を持って会社づくり、事業づくりに挑むという企業文化です。
製造業では珍しいのですが、最上インクスにはデザイナーやシステムエンジニアも在籍し、自社でできる事業をどんどん増やしてきました。
そうした社風なので若手社員でもやりたいことがあれば全力で応援しています。
私も社長として社員の主体性を育てるために、トップダウンで命令はしません。社員と一緒のチームを組んでいる気持ちで、互いの意見や思いを通わせながら事業を進めるようにしています。
しかし、前の会社から移ってくれた社員の方々は、指示された作業をしっかり対応する真面目さを持っている反面、自分たちで考え行動していくアクティブさに欠けていました。
こうした環境下で働いてきた方々に対し、急に最上インクスの文化を受け入れてもらうことは難しかったんです。
―急に違う会社のDNAを継承するのは難しいですよね。どのようにして社員の考え方を変えて行ったんですか?
最初の1年間はとにかくコミュニケーションをとり、互いに話し合いながら理解を深めていったんです。
私は京都本社の社長も務めているので、毎日鳥取に行けるわけではありません。それでも、行ける時は会議で発言させてもらったり、現場で声をかけたり、社員の方と一緒に食事するようにしていました。
最初は話しかけても返事がないほど警戒されていましたね。社員の方々も急に社風が変わって不満もあったと思います。でも1年が経つ頃には距離感も大分縮まり、最上インクスの文化を少しずつ受け入れてくれるようになりました。
―今後のビジョンを教えてください。
「地方だからできない」という概念を壊したいと思っています。鳥取最上インクスを設立した時に、鳥取県が調印式を開いてくれました。
そこには知事や市長、商工会議所会頭も招待され、テレビや新聞記者も大勢いました。当社としてはなぜそこまで歓迎してくれたのかわからず、知事に話を聞いたんです。
そこで鳥取への誘致政策を進めているが進出してくれる企業が少ない、鳥取は人口が全都道府県の中で一番少ない、若者も鳥取では魅力的な仕事がないと言って県外に流出する状態が続いていることを教えてもらいました。
私はその話にとても違和感を感じたんです。人間的に差があるわけでもないのに、鳥取だからできない、仕事も選べない、それは間違っています。
どこにいても自分が望み、努力さえすればできないことはありません。こうした固定概念を壊すために、鳥取最上インクスを都会にも負けない経験や成長を与えられる会社にして、多くの若者に充実した毎日を送ってもらおうと決意しました。
―素晴らしい目標ですね!どのようにしてそのビジョンを達成して行きますか?
みんなが仕事を通して社会に貢献したいし、人から必要とされたいし、面白い仕事がしたいはずです。その願いを叶えるために、能動的に働ける環境の整備を進めていきます。
鳥取最上インクスで働くことによって自分の存在価値が向上する、そんな会社にします。そのためには私だけでなく、社員の協力も不可欠です。
そこでみんなの思いを一つにするスローガンとして「鳥取県内入りたい企業No.1」を掲げ、社内全体で目標達成に向けて動いています。
―仕事の魅力を教えてください。
この仕事は日本全国や海外にお客様を抱えているので、鳥取にいながら世界を相手にビジネスが出来るスケールの大きさが魅力です。
世に出る前のアイディアをカタチにするこの仕事は、技術進化の最前線に携わることができるという大きなやりがいがあります。
―最後に求める人材像を教えてください。
鳥取最上インクスの考え方に共感してくれる方を求めています。学歴やスキルの有無は気にしません。
自分たちの故郷である山陰地方を活性化させたい、この地から世界に求められる仕事がしたい、そんな向上心や郷土愛を持っていれば大歓迎です。
製造業と聞くと簡単な仕事、社会的地位が低いと言ったマイナスイメージを抱く人もいるかもしれません。ですが、皆さんが当たり前に使っているスマートフォンも我々のようなものづくり企業がいなければ生まれませんでした。
だから自分たちの仕事はとても重要な役割を担っていることを実感し、誇り高い仕事だということを胸に刻んで仕事に邁進してもらいたいです。
そうすれば働きがいを感じながら充実した日々を過ごせるはずです。