モルツウェル 株式会社

島根県 松江市

業界を牽引する企業として、 常識を打ち破り変化し続ける

代表取締役 野津 積さん

高齢者向け事業を牽引するモルツウェル株式会社。今回はその創業者、野津社長にお話を伺います。島根の中小企業がどのようにして業界をリードする地位を築いたのか、そして地域の未来を守るために掲げた「ふるさと守り」という言葉に込めた想いとは?県内有数のスゴ腕経営者の胸に秘める想いを解き明かしていきます。


 

―モルツウェル株式会社の事業内容を教えてください。

モルツウェルは介護事業所向けサービスと在宅高齢者向けサービスを展開しています。介護事業所向けのサービスは、真空調理済み食材「楽盛」の企画開発・製造・販売と、厨房のコンサルティングや運営受託を行なっています。在宅高齢者向けには、配食サービス「ごようきき三河屋」を手がけています。同業他社でも食材の企画開発から販売まで、一貫している企業はとても珍しいです。

当社の仕事は業界に新たなスタンダードを生み出すこととも言えます。当社の主力商品、真空調理済み食材「楽盛」は、業界の常識を覆す初めての製法を使っており、サービス開始以来、多くの企業が「楽盛」を取り扱う代理店に加入したり、類似の製法を導入しています。

―施設から個人まで、幅広く対応しているんですね。主力商品「楽盛」について教えてください。

「楽盛」は、当社の工場で製造した調理済み食材を真空パックで包装し、出荷する商品です。食材は管理栄養士の元、徹底的な栄養管理を行うので健康にも良く、真空パックに包装する段階で滅菌作業を施すのでとても衛生的です。松江保健所から「2019年度⾷品衛⽣優秀施設表彰」もいただきました。

介護事業所では袋からトレイに移して提供するだけなので、労働力の削減にもなりますし、経験不足の職員でもミスなく提供できます。冷蔵庫で36時間も衛生的に保存できるので、複数日分の食材をまとめて作ることも可能です。メニューは600種類以上あり、日本全国の介護事業所に1日8000食以上出荷しています。現在はさらなる品質向上を目指し、管理栄養士や大学、栄養士会との連携を取りながら新商品開発を進めています。



―「楽盛」は業界初とのことですが、どのようにして生まれたんですか?

従来の介護事業所で提供される食事は、施設内厨房で手作りが当たり前でした。そのため「楽盛」のような調理済み食材は非常識とされていたんです。しかし、手作りの食事には問題が多い。例えば、職員ごとの調理レベルによって提供される食事のクオリティにバラつきが出やすく、衛生面のリスクも高い。食中毒の危険性もありますよね。

また、業界全体が人材不足で、満足に調理ができない施設が多くありました。その実情を知り、問題を解決するために生まれたのが「楽盛」です。

真空調理で食材を作るのは難しく、莫大な投資もかかるので商品化には苦労しました。しかし、そのおかげで同業のライバルはほとんどいません。業界大手の企業でも「楽盛」の代理店に加入している会社もあるほどです。



―次に介護施設向け厨房コンサルティング、受託運営について教えてください。

厨房コンサルティングではコスト削減、少人数でも安定して運営可能な「楽盛厨房」の提案をしています。「楽盛厨房」は、「楽盛」と食材加熱用機器のセットで導入するサービスで、施設の設計前であれば厨房面積、倉庫面積を従来方式から50%程度縮小することが可能です。その節約された分を居宅スペースに転用することで、収益効率を高めることができます。

受託運営では代理店が製造する「楽盛」の配達代行や、厨房内に当社の社員が駐在し、提供までの作業を行ないます。「楽盛」を取り扱うプロフェッショナルが駐在するので、施設の方よりも効率的な食材提供が可能です。最近は人材不足もあり、受託運営の依頼がとても増えています。

―在宅高齢者向け配食サービス「ごようきき三河屋」についても教えてください。

「ごようきき三河屋」では、お弁当の配食に加え、生活支援サービスを行なっています。生活支援サービスとは買い物代行や草抜きなどです。配食の際に必ず高齢者の方と接点があるので、高齢者の方の健康状態など、地域の見守り役も担っています。



―在宅向け事業は地域貢献の側面も強いんですね。創業までのストーリーを教えてください。

モルツウェルの創業前は島根県内の大手ホテルに勤めていました。そこは昔からの慣習やしがらみが多く、自分のやりたいことができる環境ではなかったんです。それが本当に嫌で、独立を決意しました。

最初に取り組んだ事業は、大手弁当チェーン店のフランチャイズ店です。女性の社会進出が進み、忙しいお母さんが増えている時代だったので、お弁当業界は今後伸びると思い、この事業を選びました。この事業はやればやるほど成果が出るので、とても面白かったです。売上を伸ばすために、全国の店舗に先駆けてデリバリー、出前もはじめました。そして気づけば売上げ日本一になったんです。

―日本一はすごいですね!それだけ調子の良かったお弁当屋さんから、なぜ現在の高齢者向け事業に切り替えられたんですか?

ファミリー層や単身層の来客が、コンビニやスーパーの増加により減少したことがきっかけです。そして、知り合いのお菓子屋さんから、子供向け菓子の売上が激減している話を聞き、少子化に気付きました。

一方で高齢者のお客様の来店、宅配依頼が増えていたので、店舗で来客される方に販売する業態よりも、高齢者向けに食材を届ける事業にチャンスがあると考えたんです。当時は高齢者向けビジネスといった言葉もない時代だったので、業界への参入はかなり早かったと思います。最初は失敗続きで苦労しましたが、次第に高齢化社会が問題視され、高齢者向けビジネスに注目が集まる中で当社への需要も高まってきました。

―時代背景に着目した業態転換だったんですね。次に社内のことを教えてください。現在社員数、年齢層はどうなっていますか?

正社員、アルバイト含め100名程度在籍しています。正社員の平均年齢は30代中盤なので、県内でも若い会社です。現在は中途、新卒ともに積極的に採用しています。当社を支える社員の存在はとても大きいので、社員が安心・安全に働くことができる職場作りにも取り組んでいます。

最近はより社員目線の制度を充実させるべく、若手幹部社員が中心となって「働く環境づくりプロジェクト」を発足し、これからの健康経営や働き方改革を協議しています。



―社員を大切に考えているんですね。人材育成するために取り組んでいることはありますか?

当社には人材育成制度として成長シートというものがあります。これは社員自ら目標を設定し、毎月上司と面談しながら、目標達成への進捗具合を確認しています。こまめに社員の現状を確認しアドバイスをすることで、確実に成長することができます。

―新入社員は入社後どんな仕事をしますか?

入社後は、3ヶ月かけて全ての部署を回ってもらい、当社全体の動きを知ってもらいます。その後の本配属では、なるべく希望通りの部署に配属します。部署は幅広く、管理栄養士といった専門職から、製造、配達といった事業の中心を支える仕事、そのほかにエンジニアや映像関係の部署もあります。人気があるのは「ごようきき三河屋」の仕事です。

―「ごようきき三河屋」ではどんな仕事をしますか?

配達だけでなく、企画、販売の計画も立てます。パンフレット製作や他所とのタイアップを企画するなど、販売促進のアイディアも自分たちで考えます。アイディア出しから実行まで、自由度の高いことが最大の魅力です。

他にも厨房の受託運営サービスもとても面白い仕事です。この部署では運営を受託した施設を複数管理し、働くスタッフのモチベーション管理やアドバイザー的な業務を行います。管理施設の入居者が増えるなどの成果が出れば、さらに新たな客層を開拓につながり、より広い地域に当社のサービスを提供できます。このスケールの大きさが魅力です。



―社員に求めていることを教えてください。

仕事は自分のやりたいことに取り組まなければ、成長しないと考えているので、何事にも主体的に取り組んで欲しいと思っています。主体的に取り組んでいるならば、失敗しても構いません。アイディアがあればすぐに許可するので、どんどんチャレンジして欲しいです。そうしたアイディアを思いつく独創性持ち、変化にも柔軟に対応できる人ならば、活き活きと働ける会社だと思います。

―社員から実際に出てきたアイディアはありますか?

最近ではYouTubeをやりたいという社員がおり、チャンネルを設立しました。あっという間に登録人数2000人を超えです。また島根県初の認定栄養ステーション「@三河屋」の立ち上げも社員のアイディアです。

社内起業でも独立でも、社員がやってみたいことは積極的に応援しています。実際に今まで9人ほど独立しました。優秀な人を独立させるのは勿体無いと感じるかもしれませんが、私はあまり社内外の枠を重要視していません。彼らとは今でも綿密に連絡をとり、協力しています。

―最後にビジョンを教えてください。

当社では「ふるさと守り」というミッションを掲げており、その実現に協力してくれる仲間をもっと増やしていきたいと思っています。私たちのように地域に根を張っている中小企業は自分たちの力でふるさとを守らなくてはいけません。ふるさとは、モノやコトでは存続しません。魅力的な人材を育て、その人たちが地域で活躍することで初めてふるさとは守れます。

そのため、どれだけ面白い人材が地域に育つかが重要です。人に頼らず、自分の頭で考え、行動に起こす、自立した人材の育成にこれからも力を入れていきます。

そして島根県だけでなく、私たちの関わる他の地域でも同じように、魅力的な人材を育てられるようにサポートしていきたいです。私たちの想いに共感し、明るいふるさとの未来を作りたいという熱意ある若者からの応募をお待ちしています。

介護事業所が抱える課題の解決に向けて