東京に本社を構える建設会社「梅垣組」は長い歴史を持つ企業です。お話を聞いた梅垣賀春社長は、とても柔軟な考えをお持ちの方。いつも笑顔で、笑いが絶えない楽しい取材になりました。この明るい雰囲気で働けるのはとても魅力的だと思います。
—梅垣組が、どのような経緯で設立されたのか教えていただけますか。
創業から90年近くも歴史がある梅垣組は、私の祖父が設立した会社です。起業前は大阪の建設会社に勤めていたそうですが、1923年に起こった関東大震災の復興工事に建設会社の東京支店責任者として関わりました。
震災で家をなくしたり、工場が焼けて仕事を失った大勢の人達を目の当たりにして、一刻も早く、普段の生活に戻してあげようと尽力したそうです。
そんな悲惨な状況からの立て直しを経験していたからこそ、祖父は「お客さんが困っていたら、どんなに厳しい条件のもとでも、なんとかやりくりして期待に応えていく」という顧客のことを最優先に考える方針を掲げて起業したそうです。
この方針は90年経った今でも変わりません。
—創業以来、想いは一貫されているんですね。社員さんにもその方針は浸透しているんですか?
もちろんです。もう梅垣組の社員じゃなくて、向こうの社員になれと言ってしまいそうになるくらい、お客さんの立場になって仕事をしています(笑)
—なるほど(笑)梅垣組が行う事業はどういったものですか?
私たちは「現場監督」の仕事をメインに行なっています。建設現場というと、現場作業員が活躍するイメージだと思いますが、現場監督は作業員が手際よく動けるように調整し、完成へと導いていく建設現場のリーダー的存在なのです。主に作業員の安全確認や、作業工程を管理しています。
—創業からずっと、「元請け」という立場にこだわって仕事を受注していると聞きました。そこにはどんな思いがあるのですか?
建設の仕事には元請けと下請けがあります。お客様から直接仕事をいただくのは元請け、別の建設会社を経由して仕事を回してもらうのが下請けです。私たちは下請けの仕事は一切しません。
下請けの仕事は本当に自分たちがやりたい仕事ができないですし、お客様がどんな施工をして欲しいかというコミュニケーションが直接取れないので、自分たちの満足いく仕事ができないんです。
実際に現場監督として仕事をする際は、自分でマネジメントできる現場なのかどうかで、仕事のモチベーションが違うんですよね。いい仕事をするためにはやはり元請けで仕事を引き受けるべきだと考えています。
—では次に、梅垣社長についていくつか質問させてください。まず、梅垣組に入社した経緯や社長を引き継いだ当時のこと教えていただけますか。
私は4代目の社長になりますが、学校を卒業後に新卒で商社に入り、5年半勤めた後に梅垣組に入社しました。そこからは営業を担当していました。当時から決めていたのは仕事を楽しむということです。
仕事は嫌だなとか、ため息をついて取り組んでいても、決していい仕事はできません。
それと、仕事やプライベートに関わらず、人とたくさん会って話をするということを大切にしていました。この人は何を考えているんだろうと常に考え続けながら接することで、コミュニュケーション能力が培われ、自然と腹を割って話してくれようになるんです。
—ストイックですね。
当時は、仕事に関係ないことを含めて、私ができることならばなんでも手伝いました。時には、お客さんのお見合い相手を探したこともあります。こうして少しずつお客様との距離を縮め、感謝を積み重ねることで、次第に取引を拡大していったんです。
—では、梅垣社長の活躍で取引を拡大させていったんですね。
そうですね。実は、私が会社に入った頃の梅垣組では、新規のお客様を増やすことに消極的でした。でも、せっかく長年培った素晴らしい技術があるんだから、もっといろんなところに営業して、お客様の裾野を広げていくようにと方針を変えました。それによってどんどん売り上げが伸びていったわけです。
それと、同じ社員がなるべく長く同じお客様を担当するようにしました。そうすることで信頼関係の構築できるので、最初は5000万円くらいの発注規模だったのが、どんどん大きくなっていったんです。
今では10億、20億規模の大きな発注をしていただけるまでになりました。このような、継続は力なりというやり方が梅垣組の成長に大きく関わっていると思います。
—信頼関係の構築が大切なんですね。
それが仕事の醍醐味でもあります。お客さんの距離が近くなることで、お客さんと一体となった仕事ができる。そうすると、ものを作っている人の悦びを分かち合うことが出来るんです。
—なるほど。では次に、今回取材のメインである島根採用の面で色々お聞きしたいと思っています。梅垣組は全国に拠点を持っていますが、島根県の江津工場をいつ開設されたのですか?
2018年の2月です。日本製紙さんから依頼されて日本製紙江津工場の一角にオフィスを構えております。土地勘もない地域だったので、お話を受けるか悩みましたが、会社の方針の通り、お客様が困っているならば出来る限りの事をしようと思い引き受けました。
—江津工場での仕事内容はどういったものですか?
現在は日本製紙さんの工場や寮、社宅の建設を請け負っています。江津には戦前に建てられた木造の工場がたくさん残っているんです。以前は人絹(レーヨン)の工場がありましたが、現在は食品添加物やセルロースナノファイバーなどのケミカル系の製品を作る工場が多くなり、気密性の高い工場が必要となりました。そこで古い木造ではなく、最新の工場に再構築しないといけない。今後はそういった仕事をメインに事業を展開していく予定です。
—江津事務所では、どのような体制で働くことになりますか?
一定期間は東京の本社で研修をしてもらいます。梅垣組がどういう会社で、どんな想いで仕事をしているのか、まずは肌身で感じてもらいたいからです。
最初から江津工場に配属となると、江津の所長と一定のお客さんとだけのコミュニケーションになってしまいます。
まずは東京に来て、実際の現場経験を積みながら、仕事の進めた方を学んでもらいたいと思います。もちろん先輩にただ付いていくだけではなく、細かな施工をするための施工図を描いたり、現場でしか学べないことをしっかりとOJTしながら覚えてもらいます。
そこでしっかりと成長してもらった上で、江津工場に正式に配属するというのが一番いいのではないかと思っています。
—東京でも江津工場でも現場監督を務めることになります。では、現場監督として大切なことや、求められることがあれば教えてください。
現場監督の仕事は、人と話すことがとても大切なんです。お客さんから言われたことだけを黙々とやるのではロボットと変わりません。
お客様と話し合ったり意見を交わしながら、お客さんの希望を理解した上で仕事をしないと、いい仕事はできません。
ただ、コミュニケーション能力はなくてもいいんです。私は社会人になるまでは引っ込み思案でしたが、社会に揉まれる中で次第に人と話せるようになりました(笑)。性格は環境で変わるものだと考えています。
だから梅垣組に入ってから一歩一歩育っていければ、なんの問題もありません。やる気さえあれば、どんどん自分のスキルを向上させられる環境が整っています。