fruit gift&cafe moritani(有限会社森谷)

島根県 益田市

地方だからこそできること

代表取締役 森谷典子さん

益田駅前にお店を構える「fruit gift& café moritani」は、戦前からこの街で事業を営んでき老舗フルーツ屋です。お話を聞いた森谷さんが社長に就任し、経営難から再建、現在のおしゃれなカフェや美味しいフルーツが楽しめる場所へと生まれ変わりました。どのようにお店を変えていったのか、その心の内側に一歩踏み込んで聞いていきます。


―事業内容を教えてください。

fruit gift& café moritaniは有限会社森谷が運営するお店です。主な事業内容は3つ。1つは慶弔事で贈るフルーツギフトや葬儀用の盛籠を取り扱っています。2つ目は併設するカフェの運営です。ギフト用にとっているフルーツの一部を活用して、カフェで提供しています。3つ目はフルーツスイーツの製作部門です。フルーツ屋ならではの焼き菓子やフルーツをたっぷり使ったお誕生日のフルーツタルトなど、見た目も綺麗で味も美味しいスイーツを作っています。

―フルーツギフトはどういった方に送るんですか?

日本全国の方に発送してます。益田や島根といった近場よりは都心の方が需要としては多いですね。 お客様は昔からご愛顧いただいている方が多いんですが、最近は島根旅行に来られたお客様がカフェに寄られて注文につながることが増えてきました。



―カフェはmoritaniの良さを知ってもらうきっかけの役割を果たしているんですね。

そうですね。カフェで扱うフルーツはギフト同様に選りすぐりのものを使っています。フルーツは一番美味しい食べ頃の時期でも、少しでも傷ついていたり見た目が悪いものがあるとギフトでは送れません。でも味は変わらず美味しいので、そういったフルーツを加工してカフェにお出ししています。

―森谷さんはどういった経緯で代表取締役になったんですか?

もともとこの会社は夫の実家が運営している会社です。結婚を機にこの会社に入社し、最初は従業員として夫の母と一緒に働いていました。その後、夫の母が高齢のため事業承継を行うこととなり、夫が別の会社に勤めているのもあって、私が会社を継ぎました。

―旦那さんのご実家ということは昔からある会社なんですね。ずっとギフトなどを取り扱ってきたんですか?

法人化したのは1980年ですが、戦前1938年頃からフルーツ屋をこの地域で営んでいたそうです。私が4代目になります。フルーツを販売しながら、駅前という立地からお土産や食品も販売していました。フルーツギフトの事業は昔から手がけていたそうです。私が来た当時は今の見た目やイメージとは全く違う、街のお土産やさんさんという感じでした。1階がフルーツ屋 兼 土産物屋で2階はフルーツパーラーとして営業していましたが、昔ながらの喫茶店のような店構えでした。



―今のおしゃれなお店の雰囲気とはだいぶ違うんですね。入社されてから現在のお店になるまでにどんな経緯があるんでしょう。

まずは、自分と同じ思いで同じ方向を向ける人を探して、少しずつ仲間を増やしていきました。ただ、急に業績がよくなるわけではないので、年々減少していた売り上げに対して、人件費が増え、一度は厳しい状況に陥りました。人の事、お金のことと、新米経営者としては始めから沢山の辛い経験をしましたが、多くの人に支えられ少しずつ良い方向に向かっていきました。

―少しずつお店を変えていかれたんですね。

大きなターニグポイントになったのは3年前、私が社長に就任した時です。そのタイミングでお店の雰囲気をガラッと変えました。まず2階にあった喫茶店を1階に移し、カフェのイメージを強調しました。フルーツギフト屋さんってどうしても入りにくいイメージがありませんか?なのでまず、カフェとして入りやすい雰囲気を作る。でも入ってみると、上質なフルーツや選び抜かれたお土産がある。そんな洗練された場所を提供したかったんです。

カフェの移設に合わせてメニューも一新して、女性が喜ぶようなフルーツたっぷりのスイーツの提供を始めました。昔はフルーツパフェが1週間に1個しか出なかったんですが、今では1日に20個以上は出るようになりましたし、自家製パンケーキは若い子からもものすごく人気ですね。



―カフェに訪れることで果物を身近な存在にしていくのが狙いなんですね。

最近の若い人は特にフルーツを食べない傾向がありますよね。フルーツは贅沢品のイメージが強いんだと思います。だからこそ、気軽に食べることが出来て、ちゃんと美味しさと栄養価の高さを伝えられるようにしたんです。実際にカフェを始めてから地元の学生さんもよくお店に来てくれるようになりました。

学生さんにフルーツっておいしいなと思ってもらえれば、大人になってからフルーツギフトを利用するようにもなるかもしれないですよね。また、学生さんに地元にこんな美味しいフルーツが沢山あるんだと知ってもらうことで、地元に自信と誇りを持ってもらいたいんです。

―商品を考える際に、どのようなことを意識されたんですか?

まずは、見た目の美しさから手を伸ばしてもらい、フルーツが美味しいと思ってもらう事を意識しました。

ですので、パフェなどスイーツのラインナップは写真に映えるような見た目を意識し、使うフルーツはギフトで取り扱う高品質なものを使うようにしています。また、都会から来たお客様はここでしか食べられないという体験を一番喜んでくれるので、使用する果実はなるべく島根のものを使うようにしています。

実は、いいものを使っているために原価が上がってしまい、カフェで出す商品を少し値上げしました。最初は値上げしたら誰も食べてくれないのではと不安にも思っていたんです。でも値段が上がっても多くのお客様に来て頂けるようになりましたし、みなさんすごく喜んで、笑顔で帰ってくださるんです。そこから少しずつ自信がついてきましたね。きちんと良いものを選び、付加価値をつけて商品を作っていればお客様は受け入れてくれる。現在も商品を作るときはそのことをしっかりと胸に刻み、お客様に喜ばれる商品を開発するようにしています。



―そういった新商品はどのように開発するんですか?

日々あれもやりたいね、これもやりたいねってスタッフみんなで盛り上がっています。その中から話し合って新商品が出来上がる感じです。

―和気藹々としていて働きやすそうですね。

女性スタッフが多いお店だからだと思います。毎日笑いが絶えません。ただ仕事と子育てを両立している方が多いのでシフトの調整などは大変ですね。私も子供が3人いて、毎日保育園の送り迎えをしながら働いています。

―仕事と子育てを両立するのは大変ですよね。両立をサポートする仕組みや、働く女性への支援などはあるんでしょうか。

保育園の送り迎えや家事ができるようになるべく営業時間は短くして、ほとんど残業はせずにみんな一斉に帰るようにしています。あとは仕組みとかではないんですが、子供が熱を出したら仕事中でも迎えに行けるようもちろん配慮しますし、子供の行事がある場合は行事を優先させたり、家族の介護等配慮もします。女性だからこそ、みんな互いの事情がわかるので補い合うことができますし、何よりも、皆、限られた時間の中でお互いにフォローしながら効率よく働くことができます。



―女性経営者だからこそ、女性の活躍を一番に応援しているんですね。

私は仕事を通して、女性が輝くサポートをしたいと思っています。子育てをしながら働くことは容易ではありません。起きない子供を毎朝起こして朝ごはん食べさせて、何とか必死に保育園に送っていくんです。時には熱が出たら呼び出しがかかったりします。そんな生活の中でも日中は男性並みに働かなくてはいけません。場合によっては親の介護まで入ってきます。そういったライフイベントをこなしながら生きている女性が多いんです。

だからこそ、女性にもっとのびのびと充実した人生を送ってもらいたい。生き生きと働いてもらいたい。そう思っています。moritaniはそんな女性が働きたい、働きやすいと思ってもらえるように様々な事情への配慮を心掛けて、個人個人のライフスタイルに合った働き方に寄り添うよう、会社を経営しています。将来的には、もし何かあって一人で子供を育てることになっても路頭に迷うことなく、堂々と子育てできるだけの給与が出せるように都会の会社にも負けない、仕事内容も待遇も魅力的な会社に成長させていきたいですね。

―女性経営者の方からお話を聞く機会も少ないのでとても勉強になります。では最後に、今後のビジョンを教えてください。

私はこれまで東京や大阪、海外と様々なところで働いていました。その時に感じたのが、自分らしく生きようと思えば、場所や周りの環境は関係なく、どこでも楽しく生きられるということです。自分らしく生きられるように、今いる環境に感謝し、学び、努力することこそが一番大切なことだと気づけました。そんな思いを胸に、地元の益田に帰って来ました。

その考え方はお店に関しても同じだと思います。地方だからできない、ではなく地方だからこそできることってたくさんあるんです。益田は自然が多く、年間通してフルーツがあり、心も体も元気になれる環境ですし、魅力が沢山あります。この地域だからこそ美味しく新鮮なフルーツを通して、多くの人に益田の良さを知ってもらいたいです。訪れた人が、益田にはこんなにいい企業があったんだ、自分もここで働きたい、そう思ってもらえる企業を、そしてフルーツの良さを伝えられる企業を目指していきたいですね。

創意工夫を応援してくれる職場