社会医療法人 仁寿会

島根県 邑智郡

みんなが笑顔で働き続けるために

理事長 加藤 節司さん

高齢化社会を迎え、多くの人が医療を必要とするこの時代。今までの医療の形からさらに一歩踏み込み、患者さんの「幸せ」を大切にしながら、医療から介護まで、地域医療の担い手として活躍するのが「社会医療法人仁寿会」です。90年近い歴史がある仁寿会では、これからどんな医療を目指しているのか。これまでのストーリーを含めて、理事長の加藤節司さんに詳しく伺いました。


—仁寿会の名前の由来を教えていただけますか?

仁寿会という名前ですが、「仁」という文字には人を思いやる心、「寿」には健康長寿を祝うという意味が込められています。私たちのエンブレムも「紺の人文字」と呼び、人=仁(思いやりを持ったひと)を表します。私たちはその心を持って、健康長寿でいられる人が溢れる社会づくりに貢献したいと考えています。そんな仁寿会が掲げるビジョンは「地域に住む人々を最もよく知り、その人々の善き人生に貢献する。その貢献を積み重ねていくことで地域社会を変えていく」というものです。その想いを胸に、私たちは病院、診療所、介護老人保健施設、介護保険事業所、高齢者向け賃貸住宅の運営など、医療に関わる幅広いサービスを提供しています。

エンブレム「紺の人文字」


—加藤理事長は三代目でいらっしゃると聞いておりますが、いつから理事長に就任されたのですか?

私が理事長に就任したのは2005年ですが、この川本に戻ってきたのは1995年のことです。それまでは医師として県内外の公立病院で勤めていました。当時は私の父が理事長だったんですが、人材の確保に苦労し、経営状態が悪く倒産寸前まで追い込まれていました。それで川本町が「地域の中核病院を守ろう」と2億円の公的融資を英断、その貸付条件のひとつが、私が川本に戻り、仁寿会に勤めることだったんです。

—かなり波乱万丈な経緯で戻られたんですね。経営難の病院を立て直すのはかなり苦労されたんじゃないですか?

はい、責任の重さは想像をこえるものでした。当時の債務超過は5億円!でも、どん底のスタートだったので、逆に開き直れたのかもしれません。唯一幸運だったのは、若い頃父の勧めもあり米国の大学で医療経営について学んでいたことです。その学びと培った人脈はその後大きな支えとなりました。人を育てることの重要性を父から学んだ気がしました。

—すごい…。そこから、どのように立て直したんですか?

事業を再生していこうとした時に、まず考えたのは、これから日本の社会と医療政策はどうなっていくのだろうということです。そこで、最重要となることの一つが在宅療養を支援していくことだと気づいたんです。

在宅療養とは、病気や障害を抱えた方がご自宅で療養することです。そのためには、医師や看護師などの医療専門職がご自宅に訪問して医療や介護を提供するなど、多くの人々の支援が必要です。それでも、入院医療や通院して受ける外来医療とは違って、自宅でその人らしい生活を続けていくことができます。そして地域での人々の交流があり続けます。

私たちはその生活の中に医療を届けて、その生活の質が高くなるように支援します。患者さんにはそれぞれ病気になる前の生活があります。ですから病気になった後も、なるべくその人らしい生活を送れるよう、その善き人生をサポートしていくことが大切だと考えています。人々の生きがいの実現にコミットすることが今の時代に必要なんだと思います。

そして、この「在宅療養支援」を選択し、それに集中したことこそが、事業を立て直すきっかけとなった大きな理由です。それに集中できたのは職員の力。また、川本町の支援に加え、山陰・西中国地方で第一号、今も唯一の僻地医療分野の社会医療法人という県知事認可を得たこともさらに追い風となりました。

—在宅療養支援。なぜそこまで重要だと思ったんでしょうか?

これまでは、老人になったら入院生活つまり「医療の中にある生活のようなもの」を過ごすのが当たり前でした。病院が住まいのようでした。しかし、それは人々にとって「生活」とは言えず、また国の医療費もうなぎのぼりです。人口の推移、国民の疾病構造の変化や医療の進歩に伴い、病や障害を抱えながら暮らす人々はこれからもしばらくは増え続けます。その人々が望み、また国も望む医療の在り方が在宅療養支援であり、それは僻地・地域を守り、ふるさと創生にもつながると考えました。これが在宅療養支援に舵を切った理由です。

—なるほど。ニーズに応えて事業を切り替えたんですね。一方で、働く職員側への取り組みは何かありますか?

 仁寿会では、職員一人一人の健康と、成長そしてつながりを支援しています。それは、医療の質を高め、患者さんの生活の質を高め、結果として職員が一層元気になり、事業の継続性を高めるからです。

まず、健康支援では、集団感染をもたらす感染症の予防接種は全て仁寿会が負担をしています。インフルエンザの予防接種は職員の家族も助成しています。また、時間外労働を少なくし、有給休暇を100%取得できるよう支援しています。仁寿会の有給休暇取得率は80%程度(医療系事業所平均40%くらい)、看護部に至っては時に100%にもなります。ストレスから職員を守り、個人生活をエンジョイしてもらうためにどうしても必要なことです。

—有給休暇取得率がとても高い!休みが取りやすい企業風土なのですか?

はい。伝統的に「お互いさま」という企業風土が根づいてます。定年を迎えられた職員さんが皆への最後の挨拶で「私はこの病院に勤め、子どもの入学式、運動会、参観日、卒業式、おかげさまで全てに行くことが出来ました。これもお互いさまで休ませてくれる環境があったおかげです。ここに勤めて良かったです。」とお話になったのは心底嬉しかったですね。

—働きやすい環境が整っているんですね。では、成長という観点からはどうでしょうか?

看護師資格、各種認定資格など、職員の資格取得費用の助成と、働きながらでも資格が取得できるように研修時間の確保支援もしています。「無資格で入社したが、現場で経験を積みながら、学ぶ支援を受け、国家資格を取得できた」といった方が何人もいます。

実際の資格取得者はどのくらいいらっしゃいますか?

過去20年間で55名の資格取得者がいます。取得する資格は介護福祉士、准看護師、看護師が多いですね。現在200名の従業員規模からすると、意欲のある職員がとても多いことにあらためて気づきます。

また、学生の修学支援もしています。学校を卒業した後に、仁寿会で一定期間働いてもらうことを条件に、入社前からの資格取得支援、修学資金貸与をしているんです。今年度は5名の方が修学資金貸与制度を受けています。

—そういった福利厚生の取り組みが評価されて、様々な第三者機関から表彰を受けられていると聞きましたが、詳しく教えていただけますか。

2010年に県知事表彰として「こっころ大賞」、2015年には「第1回しまねいきいき雇用賞」、2016年には「ユースエール認定」、2017年には「プラチナくるみん認定」、2018年に「健康経営優良法人ホワイト500」、「プレミアムこっころカンパニー」という賞を受賞しました。中でも若い人たちに知っていただきたいのは「ユースエール認定」です。

 —「ユースエール認定」ってなんですか?

厚生労働省が、働く若者にエールを送り続ける模範企業として認定するものです。山陰で初めての認定でした。これに認定されるためには、有給休暇取得率が70%以上、離職率が20%以下などの厳しい条件をクリアする必要があります。ちなみに、離職率は5%以下でした。また、それとは別に、従業員100名以上の企業は働く人の育児支援・介護支援についての行動計画が義務づけられていますが、その実行力の評価で0.02%、8万企業のうち160企業程度しか選ばれないのが「プラチナくるみん認定」です。

つまり、仁寿会では若者も育児をしている方も、介護をしている方も、誰もが働きやすい環境が整っているということです。また「ホワイト500」(2018年度)は職員への健康管理など、優秀な健康経営を行なっている全国トップ500の企業であるという認定です。中国地方で選ばれた企業はわずか13企業でした。快適な職場として公に認められた健康支援、成長支援、つながり支援ということだと思います。

—仁寿会は日本国内でも随一の働きやすい環境ということですね。

そうです。私たちのやり方は「仁寿会ウェイ」。ワークライフインテグレーション(仕事も個人生活もハッピーに人生充実)、トリプルDO(組織風土・制度・クラウドをDO)、イニシアチブ(現場で主体的に解決)の3つを大切に、職員が自分たちで快適な職場を作っています。自ら学び、成長し、専門性を高め、自信をもってチームとしてつながり、連携医療を提供し、患者さんの生活の質を高めることに貢献する、そんな好循環がみられる職場です。

ですから、仁寿会では健康を自分で維持管理して、自分自身を成長させていく意欲のある人を求めています。それと、学問だけではなく体験や経験など様々なことから学ぶことができる人と働きたいですね。

—最後に、これからの仁寿会の方向性や地域での役割を教えていただけますか。

川本町に本部がある仁寿会も、今では邑智郡、大田市を超えて、島根県西部の全医療圏の医療介護に貢献しています。私たちは、山陰で唯一の僻地医療分野の社会医療法人として、地域の医療を守るだけでなく、そこに住まう人々の善き人生を支援し続けながら、より良い社会・地域づくりに貢献していきたいと思っています。そして、関係人口づくりのすそ野も拡げながらより広域にお住まいの方々へも仁寿会の在宅療養支援をお届けしたいですね。

職員インタビュー動画(医師編)

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