井上鋼材は鋼材の販売から加工、工具の販売まで、鋼材のオールラウンダーです。
大手の同業他社が多い環境でも、独自の強みを磨くことで、日本のものづくりを支えてきました。
100周年を迎え、更なる飛躍を目指す井上鋼材のこれからについて、井上社長に詳しく教えてもらいました。
―事業内容を教えてください。
当社は鉄・ステンレス・アルミといった鋼材の販売をメインに、溶接機などの機械工具販売、鋼材の部品加工受託の3事業を展開しています。
1番の主力事業が鋼材の販売です。売上の70%を占めています。機械工具販売、部品加工受託がそれぞれ売上の15%程度です。
取引先は300社程度で、営業範囲は米子市内から境港市、島根県の安来市、松江市といった中海圏域を中心に、鳥取県東部、島根県の出雲市まで、幅広くカバーしています。
―社内にはどのような仕事がありますか?
社内は営業チーム・商品チーム・業務チームの3つに分かれています。
営業チームは4名が在籍しており、営業全般から見積書の作成、遠隔地の取引先への配達、鋼材の加工など、幅広い業務を行います。社員ごとにエリアで担当が分かれており、1日に5件程度の取引先を回りながら、困りごとのヒアリングや、商品に関する情報提供などを行います。新規開拓よりも、既存顧客先との関係を強化するルート営業が中心です。
―商品チームの仕事内容を教えてください。
商品チームは配送・倉庫管理の業務を行います。現在3名が在籍しており、配達の専業が2名、倉庫管理が1名です。配送ではトラックに乗り、大山町から松江までの中海圏域の配送先に、1日2回、20件程度の配送を行います。業務チームは経理や人事など、バックヤード全般を担当する部署です。
―会社の設立経緯を教えてください。
創業は1923年なので、2023年に創業100周年を迎えています。創業者は私の祖父で、出身は島根県だったのですが、上京し、東京の神田エリアでハガネの販売を行なっていました。
その後、第二次世界大戦が始まり、戦火で自宅や倉庫を失った祖父は、祖母の実家である境港市に疎開をします。戦後は東京に戻らず、山陰両県でハガネの販売を再開し、取扱商品を徐々に拡大しながら現在に至ります。本社を構える和田浜工業団地には、1992年に移転しました。
私は1997年から3代目の代表取締役をしています。
―井上社長の経歴を教えてください。
私は米子市出身で、大学は滋賀大学経済学部に進学。卒業後、東京の東芝機械株式会社(現:芝浦機械株式会社)という総合機械メーカーに就職しました。東芝機械では営業として5年間働き、1991年、28歳の時に当社へUターンします。
元々会社を継ぐことは特に考えていませんでしたが、2代目社長のガンが見つかったことで、私が会社を継がなければ、ここまで会社を支えてくれた社員を路頭に迷わせてしまうという気持ちから、会社を継ぐ決意をしました。
そこから数年はNo.2の立場で働いていましたが、最初は扱う商品も違いますし、とにかく先輩社員に追いつこうという気持ちで一生懸命でしたね。先代と親子喧嘩することもありましたし、しばらくの間は苦労しました。
―会社の強みを教えてください。
当社の強みは「スピード」「どこよりも親切」「近いこと」の3つです。常に速さを意識し、納品、配達、見積回答、全てをスピーディーに対応します。
また、鳥取県西部地区で唯一、鋼材の倉庫を保有しているので、注文から数時間で鋼材を届けることも可能です。距離の近い取引先は、直接取りに来られることも多いです。
他にも、鋼材を加工して出荷したり、小ロットの注文も受け付けたり、他社では請け負わない依頼にも対応しています。
山陰には同業他社も多く、社員が数百名規模の大手もいますが、こうしたきめ細やかなサービスを提供してきたことで、お客様からの信頼を勝ち取ってきました。
―そうした企業努力が多くの取引先に信頼される秘訣なんですね。社員には日頃からどんな言葉をかけていますか。
「時間を大切に」「お互い様の精神を持とう」という言葉をよく言っています。
当社の業務は、定型的なものが少なく、営業チームも配達チームも、効率よく働くためには社員自身が考えなくてはいけない部分が大きいです。そのため、時間と成果を、常に頭に入れて行動してもらうよう声をかけています。
また、社員が自身の仕事に集中できるよう、大手も使用している管理システムを導入し、事務手続きの簡略化にも努めています。日報や翌日の計画の提出も簡単な操作でできますし、社内のやり取りもチャットでできる環境です。
―個人の裁量が大きい職場なんですね。お互い様の精神について教えてください。
顧客とのコミュニケーション方法や、効率の良い配送方法を考えるなど、裁量が大きい部分もあります。しかし、基本にあるのは全員で協力して仕事に取り組もうという考えです。仕事を完遂するためには、チームで協力しなければいけないことが必ずあります。
その上で、お互い様の気持ちを大切にし、困っている人がいたら手を差し伸べる、休みを取る人がいればカバーするといった気持ちを持って働いてほしいと思っています。
―課題を教えてください。
業界として価格競争が多いこと、若手採用の2点が課題です。
私たちの販売する鋼材や機械工具は、会社ごとに差がありません。そのため、値段を下げ、たくさん売るという薄利多売の販売方針を掲げる会社が多いです。
しかし、薄利多売の経営は社員への負担も多いですし、値下げ競争が続くほど利益を圧迫してしまいます。こうした値下げの負のスパイラルから抜け出すためには、値段が高くても仕事をいただける、当社独自の付加価値が必要です。
―独自の付加価値を生み出すために、どのような取り組みを行なっていますか?
営業スキルの向上・部品加工受託事業の拡大に取り組んでいます。
まず、営業スキルの向上ですが、昔と違い、今はモノも情報も溢れている時代です。そうした中、数ある同業から当社を選んでいただくためには、ただモノを売るのではなく、顧客の課題解決につながる提案を行うなど、工夫した営業方法が求められます。新しい営業方法については社内でも研究を進めているところです。
―部品加工受託事業の拡大ではどのような取り組みをされていますか?
部品加工受託の事業では、将来的に売上全体の3割まで、事業を拡大していきたいと考えています。
当社の取引先にはメーカーなどから指示をもらい、仕入れた鋼材を切断する、曲げる、穴を開ける、レーザー加工を施すなど、前加工と呼ばれる簡単な加工を行なった上でメーカーへ納品する小規模事業者の方がたくさんいます。
こうした方々は高齢化や後継者問題を理由に、年々減っているんです。前加工の担い手が減り続けると、メーカーには前加工の施工業務が増える、担当者を雇うために人的コストが増えるなどの問題が生まれます。
そこで当社が鋼材の販売に加え、前加工も引き受けることで、当社は付加価値向上による利益率向上、メーカー側にとってはコスト削減というWin-Winの関係構築が可能です。
現在当社では切断のみを引き受けていますが、今後は設備の導入や県内外の協力会社との連携により、対応できる前加工の範囲を拡大していきます。
―若手採用の取り組みについて教えてください。
当社では営業チーム・商品チームで活躍する人材を求めています。それぞれ、新入社員が入った際にはしっかりと研修を行うので、未経験の方でも安心してください。
まず、営業チームでは、入社後、先輩社員の営業に同行しながら業務を覚えてもらいます。ある程度業務を覚えた後は、先輩からエリアを譲り受け、一人で営業を行う形です。
商品チームは商品を覚えるところからスタートします。半年程度は、先輩の指示を受けながら実習に取り組み、その後、独り立ちします。
―先輩達がサポートしてくれるので、安心して仕事を覚えられる環境なんですね。研修以外の労働環境や福利厚生について教えてください。
当社では週休2日制を導入しており、年間休日は105日です。第一土曜日は全員出勤、第三土曜日が交代出勤になります。
また、有給の取得を推奨しており、休みはとりやすい環境です。有給取得率100%の社員も複数います。
賞与は年3回、経常利益の30%を賞与として還元しているので、皆さんの努力がしっかりと給与に反映されるようになっています。
福利厚生ではジョイサポートよなごという福利厚生サービスに加入しているので、勤続年数に応じたお祝い金や、出産祝い、入学祝い等の支給、イチゴ狩りや映画チケットの割引などが利用可能です。
他にも忘年会、2年に1度の社員旅行、ボーリング大会などコミュニケーションを促進するイベントも用意しています。また、誕生日には私からプレゼントもお渡ししています。
ー求める人材像を教えてください。
明るく、元気で、挨拶がしっかりできる人を求めています。営業チームは好奇心が強い人、商品チームは几帳面な人が向いているので、自身の適性を考えながら、希望する配属先を選んでください。
逆に、求職者の皆さんにとっては、会社の価値観に共感できるかも重要な判断基準だと思います。そこで、当社を知ってもらう機会として、会社見学を積極的に受け入れるようにしています。
もし興味を持っていただければ是非、会社見学でお話ししましょう。当社の考え方や、この仕事の魅力について、しっかりとお伝えいたします。
―最後に、学生へのメッセージをお願いします。
私たちは鉄鋼業界をもっと夢があふれる楽しい仕事にしたいと考えています。
この仕事は、日本のものづくりを陰から支える重要なものです。人が生きていくうえで欠かせないインフラの構築に関わり、快適な生活を提供していることを誇りに思ってもらえるよう、やりがいがあり、給与も高く、未来も明るい、みなさんが「働きたい!」と思えるような会社づくりを進めていきます。
一日一日の学びを大切にしながら、仕事に向き合ってくれたら嬉しいです。