株式会社 はなふさ

鳥取県 鳥取市

鳥取にも和牛の文化を

代表取締役 花房 稔さん

今回は「会いにいくお肉屋さん」こと株式会社はなふさの代表取締役、花房稔さんにお話を伺いました。鳥取に美味しいお肉はない、お肉屋さんはカッコ悪い、そんなマイナスイメージを全て覆し、18年連続増収増益という成果を生み出した花房社長。その成功に至る苦労、鳥取和牛を有名にしたブランディング戦略、これからのビジョン、はなふさのサクセスストーリーの裏にある想いを一つずつ紐解いていきます。


 

―最初に株式会社はなふさの事業内容を教えてください。

株式会社はなふさでは食肉の卸、加工、販売、小売を行なっています。拠点は鳥取、大阪、兵庫、岡山にあり、それぞれの拠点から飲食店や加工業者などに商品を出荷しています。また公式オンラインショップ「肉匠 はなふさ」も運営しており、全国のお客様にお肉を届けています。

―どのようなお肉を取り扱っているんですか?

当社では神戸牛や地元山陰の鳥取和牛、島根和牛などの有名ブランド牛から、当社オリジナルブランド肉「万葉牛」、セレクト肉「花乃牛」まで、品質にこだわった様々なお肉を取り扱っています。いろんな種類のお肉がありますが、全て自分たちが実際に食べて、美味しいと思ったお肉のみを取り扱うようにしています。



―自社独自のお肉もあるんですね。「万葉牛」「花乃牛」それぞれの特徴を教えてもらえますか?

万葉牛を名乗るためには当社が設立し、私が会長を務める万葉牛生産流通組合の認定、JAいなばへの出荷が条件になります。現在は鳥取県を中心に6名が生産を行なっています。流通量は低いですが、当社の主力商品です。はなふさ=万葉牛といっても過言ではありません。

そんな万葉牛は「霜降りでもおかわりができる」と言われるほど、あっさりとした口溶けで、くどさが少ない、キレのある脂が特徴です。首都圏、関西圏でも非常に高い評価を得ており、品評会では数々の実績をあげています。

―自社セレクト肉「花乃牛」はどういったものですか?

セレクト肉「花乃牛」は出荷までの月齢が30ヶ月以上かつ、はなふさが認定したお肉のみが名乗れます。産地は日本全国です。肥育月齢の長い牛の中から、肉や脂の質が高いものを選び取っているので、A5和牛に負けない旨味があります。

―どちらもとても美味しそう!会社としてはなふさの特徴を教えてください。

当社の大きな特徴は、「会いにいくお肉屋さん」ということです。私たちは生産者に会い、お肉だけではなく、その裏にある想いや物語も一緒に販売します。私たちが取り扱うお肉は、質の高さに比例して値段も高いので、お肉の付加価値となる生産者の想いを伝えることはとても重要です。

一方で、生産者には飲食店側の想いや育てたお肉がどんな商品として売られているかを伝えています。普通生産者と飲食店が情報を共有することは通常ありませんが、私たちが両者の橋渡しになることで、互いの考えを知り、協力していくことができるんです。このよに、私たちと生産者、飲食店みんなが潤うための方法を常に模索しています。



―会いにいくことが、はなふさ最大の強みなんですね。

それ以外にも、お肉に詳しい社員が揃っているので、お客さんに合わせたお肉を提案できるという強みがあります。膨大なお肉の中から、お客様が求めるものを導き出す私たちは、”お肉のソムリエ”とも言えます。生きている牛の姿を見て、肉の質を判断できるのは当社くらいです。

―はなふさはお肉のプロフェッショナル集団はなんですね。なぜはなふさを創業されたんですか?

私の地元は鳥取ですが、はなふさを創業する前は大手食品メーカーに入社し、岡山県で働いていました。当時、岡山県では美味しい和牛が普及しているのに対し、鳥取では輸入のお肉が主流で、和牛がほとんど取り扱われていなかったんです。そこで鳥取にも和牛を普及したいと一念発起し、会社を立ち上げました。

―鳥取県では和牛が育てられていなかったんですか?

いいえ。肉質の素晴らしい和牛が育てられていました。しかし、なぜかそのいいお肉が流通していなかったんです。お店の店頭に鳥取和牛と名乗るお肉はありましたが、どれも品質の悪いものばかり。当時は美味しいお肉を食べるなら、岡山県までいったほうがいいとみんなが言ってました。地元にいいお肉があるのに、消費者に届かないことがとてももどかしかったです。

どうにかその状況を変えようと飲食店に営業を続けましたが、どこも鳥取の和牛は硬くて不味いからいらないと断られ続けました。買ってくれる業者がいても、私たちが1キロ5000円で仕入れた鳥取和牛を、1キロ2500円でしか買ってもらえないんです。創業からしばらくの間はそんな厳しい状態が続きましたね。

―仕入れ値の半分でしか売れない…それだけイメージが悪かったんですね。

そうですね。毎日の生活が厳しいような時もありました。それでも、私は不誠実な商売をしたくなかったので、常に生産者の元に足を運び、自分がいいと思うお肉だけを取り扱い続けました。そこで出会った生産者と立ち上げたのが「万葉牛」です。そうしたブランド戦略や誠実な姿勢が認められていく中で、次第に鳥取和牛の本当の美味しさが広まり、会社も軌道に乗ってきました。



―そうして徐々に事業規模が拡大していくんですね。

気づけば50人以上の社員が勤める会社になりましたし、田舎のお肉屋ではありますが、いろいろな地域に支店を持てるようになりました。ありがたいことに当社は創業から18年間、常に前年を上回る成果を出し続けています。

―すごい成果ですね! 今後はどんな目標を描いていますか?

売上100億円を目指します。そのために、質の高いお肉を取り扱うお肉屋さんとして、日本全国に営業所を出したいと思っています。

また、お肉屋さんに対するイメージも変えたいです。お肉屋さんって白いエプロンに長靴みたいなイメージだと思いますが、海外のお肉屋さんはみんなおしゃれでカッコいいんですよ。日本でもお肉屋さん=かっこいいというイメージを広めたいです。そのために、配送トラックのデザインに凝ったり、自社でアパレルも制作しています。「あそこのお肉屋さん、おしゃれだから覗いてみようよ!」と言われるようなイメージを作り上げていきたいです。



―業界全体を変えていく、壮大な目標を掲げているんですね。次に会社の雰囲気を教えてください。

社員同士が活発にコミュニケーションをとっている、仲の良い職場です。私も積極的に社員に声をかけ、なるべく現場の声を反映しながら経営を行なっています。社員の年齢平均は30代後半、中には10代の社員もいるので県内でも若い人が多い元気な会社です。

―活気のある会社なんですね。どんな人が多いですか?

新卒、中途共に未経験で入社した人が多いです。はなふさは「会いにいくお肉屋さん」という同業とは少し違った軸を持った会社なので、経験者よりも、教えたことを素直に吸収してくれる未経験者の方が成長しやすい環境だと思います。未経験者でも向上心があり、いろいろなことに興味を持てる人ならば大歓迎です。

―未経験から一人前になるために、どんな指導を行なっていますか?

自分から積極的に動ける能動的な人材を育成するために、当社では上から命令して仕事をさせるのではなく、まずは自分で考え、行動するように指導をしています。自分で行動した結果として、失敗しても責めません。失敗して学ぶことは非常に多いからです。その経験が社員を成長させてくれると信じ、なるべく自由に行動してもらうようにしています。ただし自由だからといって、人に迷惑かけたり、ダメなことをした時はめちゃくちゃ怒入ります(笑)

それ以外にも若者目線、個人のいいところを伸ばす教育を大切にしています。上司は専門的なことだけではなく、挨拶やマナーといった社会人としての最低限のルールから教えるようにしています。社員が壁にぶつかった時は、長所を伸ばすことを最優先で考え、必要に応じてフォローだけでなく、部署の配置換えも行います。



―社員が活き活きと働けるサポートをされているんですね。

入社された方には知識面もしっかりサポートさせていただきます。はなふさの社員として、お肉の部位や産地、血統による肉質、味の違いといったお肉屋さんとしての知識はもちろん、牛の生態まで学べる機会を用意しています。学べば学ぶほどお客さんに伝えられることも増えるので、勉強にゴールはありません。

社内には生産者と同等以上の知識を身につけた人や、牛のことが好きになりすぎて削蹄という牛の爪切りまで行う社員もいます。本気で学ぶ気さえあれば、未経験者でも同業他社のベテラン社員を追い越すくらいの知識を身につけられる環境です。

―最後に学生へのメッセージをお願いします。

社会人になると楽しくない、夢や理想なんてないと思うかもしれません。でもそれは間違いです。私は学生時代に描いた料理人になる夢が叶えられず、挫折したことがありました。それでも、今の会社を立ち上げたことをきっかけに、新たな理想を見つけられたんです。だから社会人になっても皆さんはやりたいこと、追いかけたいものをきっと見つけられます。そして当社は、そんな活気に満ちた人々を応援する会社です。ぜひあなたのやってみたいを、はなふさで追いかけてみてください。

牛の物語を伝え、生産者と飲食店をつなぐ