自動車部品や航空機エンジンなどに使われる部品の精密加工を行う秦精工株式会社は、新たな事業の展開や、働く環境の整備を進めています。
今回は代表取締役社長 秦さんに、そうした秦精工の取り組み内容について詳しく教えてもらいました。
高い技術力で未来を切り拓いていく秦精工の今後から目が離せません。
―秦精工の事業内容を教えてください。
当社は特殊鋼を用いた精密加工部品の製造を行っています。特殊鋼とは熱に強い、硬い、さびにくいなどの特性を持たせた鋼です。そうした鋼材を素材にして製造される精密加工部品は、通常の鉄では耐えられない厳しい環境下で使われます。当社には自社製品を作る押出しピン課、取引先から依頼された部品を加工する機械加工課の2部署で、精密加工部品の製造を行なっています。
―それぞれの部署で、どのような役割の部品を加工するのですか?
まず、押出しピン課では、自社製品のエジェクタピンという金型用部品も製造しています。エジェクタピンは金型を用いて部品を整形する際、金型から完成した部品を剥がすために必要なものです。自動車部品メーカーなど、国内外の様々な取引先に出荷しています。
機械加工課で作る加工部品は、取引先から依頼された図面を元に、航空機エンジン、火力発電機、真空ポンプ、蓄電池などに組み込まれる重要な部品を製造しています。
―会社の設立経緯を教えてください。
当社は日立金属株式会社(現:株式会社プロテリアル)に勤めていた私の祖父が、定年退職後に日立金属の専属協力工場として起業しないかと勧められ、1970年に創業した会社です。私は2018年より3代目社長に就任しています。
―秦社長の経歴を教えてください。
私は島根県の安来市で生まれ、大学は東京の大学に進学しました。卒業後は東京にある当社の取引先に就職し、二年間働いた後、2000年から当社に勤めています。高校から理系でしたし、就職の時には会社を継ぐことを決意していました。
―秦精工の強みを教えてください。
当社の強みは少量多品種の製造から大型部品の製造まで、幅広い依頼に対応している点です。特に、大型の精密加工部品を製造できるのは山陰でも数社しかありません。
大型の精密加工部品は最終的には重工メーカーに納品され、航空機や大型機械などに組み込まれるので、通常よりも厳格な品質管理体制が求められます。そこで当社では品質管理にも力を入れており、航空宇宙産業特有の条件が付与された品質マネジメントシステムJISQ9100の認証も取得しました。
また、技術力の高さも当社の強みです。当社では取引先から図面をもらって部品の加工を行いますが、図面には許容できる誤差の範囲が規定されています。その範囲はかなり厳しく設定されており、百分の一ミリ単位で調整が必要です。加工する箇所はいくつもあり、一個でも範囲を超えると不良品になってしまいます。
しかし、当社の不良品率は全体で1%もありません。
―対応できる範囲も広い上に、技術力も高いんですね。会社の経営理念を教えてください。
当社は。1)創意研鑽の精神で、加工技術を追求する。2)お客様に必要とされるものづくりとサービスを提供する。3)お客様とともに発展し、社員、取引先様、社会に還元する。という経営理念を掲げています。
経営理念にも出てくる「創意研鑽」は、当社の正しい在り方を示す社是に使われている言葉です。創意とは挑戦する心がけ、研鑽は追求するという意味です。創業以来、加工経験のない案件や高度な技術が求められる案件に何度もぶつかってきましたが、その度に諦めず、挑戦することで技術を磨いてきました。
その結果、多くの取引先に信頼いただき、2017年には経産省より地域未来牽引企業にも選ばれています。
―創意研鑽以外に、会社で心掛けていることはありますか?
会社を綺麗にすることを重視しています。当社では「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の5S活動を推進しているんです。
5S活動では毎日昼休みが終わってから15分、道具の整理・整頓、清掃活動を業務時間内でしています。整理整頓を行うことで、効率よく作業できる環境が構築されているので、生産性も高いです。
また、安全面の取り組みでは内部監査に加え、周辺の工場同士で外部監査も行なっており、どこかで災害などが発生した場合には、その情報を共有するようにしています。
―会社の課題はありますか?
当社は時代に合わせて加工するものを変えているので、同じものを何十年も作ることがありません。よって、今後も営業もしっかりと行い、お客様の新しいニーズを収集し、挑戦していく必要があります。そのために、新しい分野への進出と、人員の確保が必要です。
―新分野への進出ですでに取り組んでいることはありますか?
2020年、航空機部品を専門で製造する新工場が完成しました。元々、不定期で少量の航空部品は作っていましたが、今後は定期的に航空機に組み込む部品の製造を受注できるようになります。
また、2013年より当社はSUSANOO(スサノオ)という島根県発、特殊鋼加工技術を中核に航空機産業を目指す企業グループに参画しています。参加企業は技術力の高さから選出された4社で、それぞれが「先進技術」「高品質」「厳格な管理」を軸に、様々な取り組みを展開中です。
当社では先端金属素材の開発拠点であるNEXTAと共同研究を進めており、難削材の加工をより高効率で加工できるよう研究を続けています。
―人材の確保ではどのような取り組みをされていますか?
製造業は過去に比べて人気も減っていますし、周辺の同業他社と獲得競争になることが多いので、他社に負けない、当社ならではの魅力を創出しなくてはいけません。そのために、働く環境の整備、福利厚生などの拡充に取り組んでいきます。
金属加工は暗い職場で油まみれになるようなイメージを払拭すべく、きれいで快適な職場を目指しており、90%のエリアで空調を利かせています。福利厚生は周りの会社の制度などをヒアリングしながら、良いと思うものを積極的に取り入れるようにしています。
―働く環境の整備ではどのような取り組みをしていますか?
働きやすい職場づくりとして、パワハラ研修の開催や、若手社員との面談、LINEを活用したコミュニケーション、総務部に直接相談できる窓口の設置などを行なっています。
また、業務面の改善案も社員から募っており、良いアイディアには報奨金を出しています。年間の休日は121日で比較的多く、残業する時もありますが、定時で退社する方が多いです。
社内には20代〜30代が40人以上いますし、女性も全体の2割弱を占めているので、多様な人材に働きやすいと感じてもらえる環境だと思います。
―募集している職種を教えてください。
当社には製造部、営業や生産管理を行う技術部、品質保証部、管理部、総務部、関西営業所がありますが、現在、製造部で活躍するオペレーターと技術部に所属する製造技術者を、新卒・中途両方で募集しています。
募集対象は理系の方がメインだと思われがちですが、文系の方も対象です。社内には文系の高卒社員も活躍しています。
―オペレーターの仕事内容を教えてください。
オペレーターは製造部の押出しピン課、機械加工課どちらかに所属し、特殊鋼を削る、穴を開けるなどの加工作業を行います。加工にはNC旋盤やマシニングセンタ、NC放電加工機といった工作機械を使うので、手作業で行う仕事は限られています。
それぞれの工作機械は工具や、加工箇所、工具の動きを指定するとプログラムが生成され、加工が始まります。操作しやすいよう、簡易的なシステムにはなっていますが、材質毎の加工条件や、適切な刃物を選択するなどの必要があるので、最初は勉強が必要です。
―製造技術者の仕事内容を教えてください。
まず、管理部は営業に加え、生産管理を行います。
営業はお客様対応(見積、受注、アフターフォロー等)を行います。また展示会に出展し名刺交換した方や、ホームページ経由でお問い合わせいただいた方に提案を行います。
生産管理では受注後の作業指示や現場の進捗管理、出荷の段取りといった業務を行います。
技術部は、加工方案の立案や改善、設備の入れ替えの検討、製造のノウハウを数値化してマニュアル化、品質改善など多岐にわたります。
―入社後の流れを教えてください。
入社後はまず、総務から会社のルールや歴史、安全への意識などについて研修を行います。その後、1週間程度で鋼種、図面の見方、測定方法の基礎、加工方法の基礎を学ぶ座学と、機械を扱う前に測定器や工具の扱い方などを学ぶ実習を行います。
そこからは先輩社員から業務の指導を受けながら、現場でトレーニングを進めていく流れです。製造技術者も最初は製造の現場からスタートします。
他にも、他の会社と合同の工場見学やビジネスマナー研修など、外部研修も豊富です。
―研修制度が充実しているんですね。資格の取得支援などはありますか?
当社では国家資格である技能士の資格取得を推奨しています。技能士は分野毎に細分化されており、等級も特級〜3級までありますが、当社の業務をしっかり覚え、経験を積めば取得可能です。受験費用や資格手当の支給もしています。
―最後に、希望する人材をおしえてください。
社是の通り、新しいことにチャレンジしたい人を求めています。色々な経験を積んで欲しいので、異動希望なども積極的に声をかけてください。挑戦がテーマの会社なので、チャレンジ精神が旺盛な方は毎日を楽しく過ごせると思います。
同年代の仲間とともに、積極的にスキルを磨き、活躍してくれたら嬉しいです。