「海上工事に使用される様々な作業船を自社で保有していることと、その作業船の能力を最大限引き出す技術力の高さが自慢です」そう教えてくれたのは代表取締役の金田隆徳さん。そこで、どういった事業を展開しているのか詳しく伺いました。
—金田建設では、どんなものを建設されているんですか?
うちは土木工事・建築工事・建築リフォーム工事など幅広く手掛けています。ただ、その中でも海に関する工事が得意ですね。例えば、防波堤や岸壁、漁礁などの制作です。このような工事はうちの設備や技術がフルに活かせるんです。もちろん陸上の仕事もいろいろやってます。崖が崩れないようにコンクリートで補強したり、下水道を整備したり、牧場をつくったり。建築部門は木造戸建て住宅やリフォームなど民間の仕事がメインですが、公共施設の建築もやらせていただいてます。
—創業当初から隠岐の島だったんですか?
創業者である僕のお爺さんは米子出身で、もともと隠岐の人じゃなかったんです。昭和26年に松江で創業して、隠岐に移ったのは昭和40年でした。当時の主なメンバーは親戚と友人だったそうです。知らない土地で知名度も信用もない状態でしたから、だいぶ苦労したと聞いてます。
—では、隆徳さんで3代目ということですね。代々続く会社を小さい頃から継ぐかもしれないと思っていましたか?
そうですね。やっぱり小さいころからずっと言い聞かされていたので、いつか継がなくてはいけないという気持ちがずっとありました。正直、相当なプレッシャーでしたね。社員の家族とか考えると100人とか200人規模になるでしょう。これだけの人の生活を守らなくてはと思うと責任重大ですよ。
—継ぐとわかっていても、簡単に覚悟は決められないですよね。
そうですね。実は、大学卒業後に大阪の建設会社で働いていたんですが、その後道を外れて建設業とは無関係な専門学校の講師をやっていた時期もあります。いろいろ葛藤があったんです。
—それでも、Iターンして来たということですね。いつ会社を継がれたんですか?
2000年に金田建設に入社しました。社長になったのは2年くらい前ですね。
—実際、会社を継いで、社長という立場になってみてどうですか?
難しいですね。社長って仕事に答えがないでしょ。判断がよかったのか、悪かったのかなんて何年もあとでないと分からないことが多い。例えば、数年前に建造したフローティングドック船も投資額がすごく大きいけどそれを確実に回収できるかなんて分からない。かといって投資しないと会社はじり貧になっていくし。いけるかもしれないって判断したら、もうやるしかないって感じです。
—では、今後も作業船を使った事業に力を入れていくんですか?
そうですね。やっぱり船を使いたい。せっかく島外の人から仕事を依頼されるような特殊な船を持っているので、どんどん外に出て行きたいなと思っています。実は、この間まで鹿児島県の甑島(こしきじま)で4年ほど仕事させてもらいました。島と島を1.5kmの橋で結ぶといった大きな工事です。
—鹿児島まで!今後は仕事範囲を隠岐に限らず全国ですか?
全国はなかなか難しいかもしれませんが…隠岐に限らずですね。フローティングドック船とコンクリートプラント船は作業船の中では特殊な部類なので、県外からも声がかかるんです。船員さんも「どこでも行きます!」と言ってくれてますので、もっと広げていきたいです。
—ちなみに、新入社員が入ってきたらまずどんなところに配属されるんですか?いきなり県外の工事ということもあるんでしょうか?
県外にいきなりはないです。向き不向きがあるので嫌なものを無理やり行かせたりもしないです。志望が監督員か現場員によっても違うんですが、現場で実際に作業を手伝ってもらいながらいろいろな経験を積んでもらいます。陸も海もあるので仕事の内容は多様です。その中から自分の得意分野を見つけて伸ばしていって欲しいです。
—なるほど。従業員は隠岐の人が多いんですか?
社員は60人いるんですが、ほとんど隠岐出身ですね。
—業務内容は幅広いと思うんですが、どういった方が求められるのでしょうか?
特に困っているのは、現場監督ですね。人員が非常に不足していて、現場監督を目指す子が来てくれたら嬉しいです。
—現場監督は実際にどんなお仕事をされるんですか?
まず、仕事を請け負うと役所から予算や図面などの制約事項が書いてある資料をもらうんです。それを基に構造物などを作っていきます。現場監督は計画からお金の計算、職人への指示から材料の調達まで全てを担当します。その分、すごく大変なんですけど、やりがいがある仕事です。金田建設では、土木は8人、建築では4人の現場監督が活躍しています。
—職人さんを統括する人ってことですよね。1人前になるのに時間かかりませんか?
土木はね…10年くらいかかると言われます。建築でも5年くらいかかりますね。とにかくそれだけ土木の現場っていうのはいろんな仕事があるので学ばなければいけないことが多いんです。
—現場監督ってどんな人が向いていると思いますか?
これは、現場監督に限らずどの仕事にも言えることなんですが、前向きな方がいいと思います。なんにでもトラブルはつきものなので、そこは割り切って、どうやったら上手くいくかを前向きに考えれる人がいいですね。あとは、ものづくりを楽しめる人ですかね。そこが建設業の醍醐味だと思うので。
—必要な資格とかはありますか?
入社する時点では要らないですね。現場で経験を積んで、その中で資格をとっていけるので、学科とか勉強の分野も関係ないです。
—建設に関わっていなくても大丈夫なんですね。ただ、建設というと過酷なイメージがどうしてもあると思うのですが…実際の現場はどんな環境なんですか?
まず、現場監督は計画や予算、現場を管理する仕事ですから肉体を酷使することはないです。また現場員も、重たい石を人力で運ぶといったような重労働はほとんとないです。機械や電動工具などを使うので、多分みなさんが思われているほど過酷ではないと思います。働き方改革にも前向きに取り組んでますよ。うちの会社は2年前から完全週休2日制にしました。
—会社として福利厚生にも力を入れていると。それ以外に、他の会社と比べて強みはありますか?
金田建設にはいくつかの子会社があって、スーパーマーケット、車両整備工場、海洋調査、牧場といった様々な事業を展開しています。ここまで多様な業種を手掛けている会社は県内でもめずらしい方じゃないでしょうか。「地域の成長なくして企業の成長はない」が私たちの考えです。建設業だけでなくいろんな分野で地域を盛り上げていきたいと思います。