今回は鳥取県で、水にまつわる設備工事を行う株式会社大丸水機の大丸修二さんにお話を伺いました。大丸さんは社長就任以来、働き方改革や新たな事業展開に挑み、会社の成長に貢献しています。これから大丸水機の進む未来について詳しくお聞きしました。
―株式会社大丸水機の仕事内容を教えてください。
当社は県や市町村から受託する公共工事として、機械設備工事、水道施設工事を行う企業です。機械設備とは、建物内の電気・水道・空調等の総称で、当社では電気以外の水道・空調の機械設備について、設置・交換などの施工現場の管理を行っています。水道施設工事は水道水を各家庭や建物に運ぶために、町中に張り巡らされた配管の新設・取替を行う工事です。現場作業から管理まで、自社で行っています。
その他、個人の方から依頼されるお風呂やキッチン、トイレなど、水回りに必要な器具の設置や交換といった水のトラブル対応も当社の大切な仕事です。
会社として、細部までこだわった施工を心がけており、これまで鳥取県、米子市より優良表彰をいただいた経験があります。
―会社の歴史を教えてください。
大丸水機は1972年に私の父が創業した会社です。父は大阪で水道設備の設計・施工に携わり、独立のために鳥取へUターンしました。最初は水道設備のメンテナンスをしていましたが、徐々に水道施設工事、機械設備工事と事業を拡大し、現在に至ります。
―大丸社長の経歴を教えてください。
私は2020年から2代目の社長を務めています。大丸水機に入社する前は、鳥取の高校を卒業後、岡山の大学で地下水の勉強をし、大学卒業後は学んだ水の知識を活かすために東京の建設コンサルティング会社で10年間務めていました。
―他社で経験を積んだ後に、会社を継がれたんですね。社長に就任されてからどんなことに取り組んでいますか?
働き方改革に取り組んでいます。まず取り組んだのが、週休2日制の導入です。元々当社は土曜日が変則休みで、労働時間も月ごとにバラバラ、休みの予定も立てづらかったので、土日または日・祝で週2日の休みを取れるような休暇制度に変更しました。
祝日のある週は土曜日が出勤日となりますが、その場合は土曜日を有給推奨日にして、なるべく休んでもらうようにしています。
また、残業時間を減らすため、業務分担の見直しと、DXに取り組みました。月の残業時間は10時間以下なので、社員は毎日17時に帰ってきて、18時には帰っています。
―残業時間がかなり少ないですね。業務分担の見直しについて、教えてください。
同業他社の場合、現場の作業員や進捗管理を行う施工管理者は日中に現場で働き、帰社後にデータ整理などのデスクワークを行うため、残業時間が長くなってしまうんです。
当社の場合は生産性向上のために、デスクワークの業務を分業化しました。施工管理者や作業員が現場で働いている間に、デスクワークも同時進行で処理されるので、帰社後に遅くまで作業する必要がありません。
―DXではどのような取り組みをしていますか?
工事部門・総務部門でデジタル化を進めており、工事部門ではデジタル化によって、1週間もかかっていた作業が1日で済むようになりました。総務部門では、これまでExcelで行っていた売上管理・顧客管理を、専用の管理システムに変更しています。Excelと違い、誰でも簡単にデータの集計・分析ができるので、業務効率が格段に向上しました。今後は社員に機能性の高いゲーミングPCを支給する予定です。
―今後のビジョンを教えてください。
「かっこいい」「休日が多い」「給与が高い」「綺麗」という、大丸水機流の4Kを達成したいと考えています。休暇制度の見直しや分業・DXの推進は、この4Kを達成するための取り組みです。今後は年商を現在の3億から5億に伸ばし、増えた利益を社員に還元していきます。
この目標を達成するために必要なのが、工事数の増加です。しかし、人手が少ない状態で無理に工事の案件を増やしても社員の負担が増えてしまいます。そこで当社では無理なく工事数を増やし、収入が上げられるよう、若手人材の獲得に力を入れています。
―採用方針を教えてください。
当社では経験の有無は重視せず、幅広い人材を募集しています。これまでは中途採用の経験者を優先していたのですが、新卒・中途ともに経験の有無に関わらず育成していくという方針に変更しました。
―なぜ方針を変えたんですか?
経験者優先で採用を行っていた頃、人材獲得競争が激しく、入社する人がいない状況が続いていました。その状況を見ていた20代の社員が、将来の不安を感じて退職してしまったことがあります。
また、3年前には若手社員が急に退職するという出来事がありました。その社員から辞めると言われた時、その原因が思い当たらなかったんです。その兆候に気づけなかった自分の不甲斐なさと、若手とのコミュニケーションが足りていない現状に危機感を感じ、方針を変えました。
それ以来、未経験であっても設備・水道業界を支える人材として大切に育成しています。また、若手人材を技術面だけでなく、メンタル面でもしっかりとフォローアップする体制を構築しました。
―方針を変更してから若手人材は増えていますか?
直近で10代1名、20代4名、30代1名、若手社員が入社してくれています。社内は若いエネルギーのおかげで活気に満ちており、世代を問わず和気藹々とした明るい雰囲気です。
経験の有無に関わらず、みんなが一生懸命働いてくれており、今年は3名の技術者が、公共工事の現場代理人として、初の担当現場を持つこともできました。
―失敗を糧に、若手が伸び伸び働ける環境づくりに取り組んでいるんですね。入社後はどんなキャリアが用意されていますか?
当社では施工管理者として機械設備工事現場の管理全般を行うか、エンジニアとして水道施設工事の作業を行うか、2つのキャリアを用意しています。入社時にどちらのキャリアを目指すのか、本人の意向を必ずヒアリングします。入社後は、なるべく早く自分の選んだキャリアを進めるように、先輩社員が丁寧に教えるので、未経験者でも安心です。
―それぞれ必要な資格はありますか?
水道施設工事の現場で働くエンジニアの場合、給水装置工事主任責任者という国家資格の取得を推奨しています。施工管理者の場合は、公共工事の管理者になるために必要な土木施工管理技士、管工事施工管理技士という国家資格が必要です。会社として講習会の費用補助、資格手当の支給などサポート体制を構築しています。
―成長するための支援制度が整っているんですね。最後に学生へのメッセージをお願いします。
当社では「安全最優先」「嘘をつかない・ごまかさない」「神は細部に宿る」この3つの言葉を胸に、高品質の施工を手掛けてきました。これから入社される方にも、この言葉に共感いただき、実直に、真摯に、責任感をもって仕事に取り組んで欲しいです。
私は社長として、社員に「自分は地域のインフラ構築に貢献している」と胸を張って言えるような、誇りとやりがいの感じられる会社づくりに、これからも取り組んでいきます。
まだまだ成長過程ではありますが、その変化を楽しみながら、一緒に明るい会社の未来を築きましょう。