脱・消費社会と言われる現在、林業は木を切るだけでなく、未来にその資源を残すことも求められています。今回お話を伺ったグリーンシャインでは、環境・社会・経済のバランスを重視した持続可能な林業の実現を掲げています。その目標を実現するためにどんな取り組みを行なっているのか、担い手を増やすために未経験の方へどんなサポートをしているのか、代表取締役の平田さんに伺います。
―株式会社グリーンシャインの事業内容を教えてください。
本社を構える日南町の山々に入り、木の伐採、出荷を主に行っています。主な出荷先は木材の売買が行われる森林組合や木材市場、バイオマス発電で用いられる木材チップの加工工場です。
また、木の伐採だけでなく、山の環境整備も行います。新たな木を育てるための植林や、過密になった木を適切な生育状況にするために、木を間引く間伐も当社の仕事です。冬の時期は地域の方から依頼された除雪作業も行なっています。
―会社の設立はいつ頃ですか?
1990年に設立されました。当時は第二次世界大戦後に植林された木を、将来木材として使えるように育てる時代でしたが、その育成を担う人材が不足していたんです。そこで森林組合が中心となり、役場や200名を超える地元民、農協などの出資を受け、育成専門の会社としてグリーンシャインは創立しました。役場が35%の株式を保有しているのでいわゆる第三セクターという立ち位置です。
―それだけ日南町にとって林業が大切な産業だったということですね。では、社長になられた経緯を教えてください。
グリーンシャインの社長になる前は、自営業として自分の保有する山や田んぼで、林業や農業をする傍、行政の非常勤職員として、教育委員会の委員などを務めていました。
ずっと日南町に住んでいるので、グリーンシャインのことは創業時から関係はありましたが、正式に所属していたわけではありません。当社の2代目社長が体調を崩されたタイミングで、森林組合より任命いただき3代目社長として就任しました。今では、日南町森林組合の組合長も兼務しています。
―社長が日頃から心がけていることを教えてください。
私たちが作業をする山には必ず所有者がいます。その所有者の方々に満足してもらえるような”良い山”を作ることを心がけています。木を切って出荷するだけでは良い山を作ることはできません。元気な木が生い茂り、将来にわたって木を切りだせるようにするには、新たな木の育成も重要です。
そのためには伐採や間伐だけではいつか木がなくなってしまいます。そこで区画にある樹木を全て伐採する皆伐(かいばつ)も行ない、新たな木を植えているんです。
新しい木は50年も経つと、立派な木材として出荷できるようになります。そうした消費だけの林業ではなく、持続可能な林業を実現していきます。
―持続可能な林業を実現するためにどんな取り組みを行なっていますか?
先ほどの通り、林業は森林整備をすることで環境の保全を担う役割があります。そこで当社では、環境・社会・経済のバランスを重視した持続可能な林業を目指しており、国連の掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の担い手として、その実現に貢献しています。
環境保全には私たちだけでなく、日南町の林業事業者全体で取り組まなくてはいけません。そこで森林組合ではFSCという森林認証制度を取得しました。これは環境・社会・経済のバランスを考え、森林が適切に管理されていることを証明するマークです。
認定されるには細かな検査項目をクリアしなくてはいけません。林道、作業道に油が落ちていないか、木の伐採は植物、動物たちの住処まで考えて行なっているのかなど、消費だけではない林業が行われているのかを毎年検査しています。人間の目から見て綺麗な山とは曲がった木や、枯れ木のない真っ直ぐな木が生い茂る山だと思います。
ですが、動物のことを考えれば巣を作りやすい曲がった木は残すべきだし、土壌を豊かにする枯れ木を残すべきです。こうした林業の環境保全活動の実態を知り、森を守るという観点から林業を志す若者も増えてきていますが、まだまだ担い手が足りていません。だからこそ、人材採用、育成には力を入れているんです。
― 一次産業全体として担い手不足が課題ですよね。こちらではどのように社員を募集し、教育しているんですか?
未経験者の方の場合、直接入社してから「緑の雇用」という制度を活用して一人前になっていただくか、林業専門学校「にちなん中国山地林業アカデミー」を卒業した上で入社いただくか2つのパターンがあります。
―「緑の雇用」について教えてください。
「緑の雇用」は新たな林業の担い手を増やすことを目的にした林野庁の補助事業です。会社が林業未経験者を雇った際、3年間、給与や研修費用を助成してくれます。研修は技術を学ぶだけでなく、機械を使うために必要な資格取得支援も行います。
林業は一人前になるまでに時間のかかる仕事ですが、「緑の雇用」のおかげで未経験の方でもしっかりと成長することができます。
―「にちなん中国山地林業アカデミー」について教えてください。
「にちなん中国山地林業アカデミー」は日南町が設立した林業専門学校です。こちらでは1年間のカリキュラムを通して即戦力となる人材を育成します。4月〜11月の間は専任指導員のもと林業実習を行います。実習内容は現場目線で構成されており、伐採や間伐、機械の操作や手入れ方法、出荷といった仕事の技術に関わることから、安全教育、資格取得といった実際に働く前に身につけなくてはいけない知識も学べます。
カリキュラムを通して林業に必要な12の資格の取得ができます。その後はインターンシップで複数の林業事業体、製材工場等を巡り、実際の仕事や職場ごとの雰囲気を経験します。この地域には30社程の林業事業体がありますが、インターンシップを通して、自分にあった職場を見つけることができます。
―最後に、他社とは違うグリーンシャイン独自の取り組みがあれば教えてください。
当社では社員が高いモチベーションで仕事に取り組めるように、自社オリジナルの生産管理システムを構築しています。このシステムを使うことで、自分の仕事量をすぐに確認することができるんです。例えば、どれくらいの木を切り、どれくらいの金額で出荷されたのかが可視化されているんです。このシステムは社員のアイディアから作りました。
今では、他社からも導入をしたいと言われるほど評判になっています。他にも社員の能力評価制度も導入しており、一人ひとりの能力、業績を公正に評価しています。社員の頑張りをちゃんと認めることで、やりがいのある職場づくりを実現しています。
社内にはベテラン社員が多数在籍しているので、豊富な知識や技術を先輩から学ぶこともできます。仕事をしながら成長したい、頑張りを評価してほしい、そんな向上心のある方が活躍できる職場です。一緒に日南町の美し