株式会社 出雲たかはし

島根県 雲南市

麺で感動を届ける

代表取締役 高橋大輔さん

麺が大好きと豪語するのは代表取締役の高橋大輔さん。まさに、好きこそものの上手なれ。今回のインタビューでは、自分の仕事に誇りを持って取り組んでいる様子と、さまざまな角度から麺の探究、挑戦を続けてきた出雲たかはしの本質が垣間見えました。



―まず事業内容を教えてください。

出雲たかはしではラーメン、そば、うどん、パスタを生麺や半生、乾麺、フリーズドライといった様々な加工方法を用いて製造しています。これまで開発してきた製品は300種類以上にもなります。

―とても種類が多いですね!それぞれ原料や製造過程も違うと思うんですが、なぜそこまで多くの麺を製造しているんですか?

創業当初は蕎麦だけを製造をしていたんですが、蕎麦に比べてラーメンは、全国にご当地ラーメンがありますし地域に密着したカップラーメンがあって、可能性の大きい分野だと思い製造を始めました。実際の売り上げも、蕎麦よりラーメンの方が伸びているんです。

まあ単純に、僕が麺を大好きだからという理由もあります。僕の体はほとんど小麦でできているから(笑)

―ラーメンの占める割合が多いんですね。製造される麺は自社ブランドで販売されているんですか?

オリジナルの製品もありますし、コラボ商品も製造しています。今6割くらいは他社と一緒に作っている商品ですね。これはOEMと呼ばれていて、パッケージや商品名は他社のブランドなんですけど、商品の中身は全部、私たちが製造しているというものです。ですから「出雲たかはし」という名前を聞いたことがない方も、皆さん気づかない内に、私たちが製造した麺を食べているかもしれません。



―県外への出荷も多いんですか?

7割は県外向けの商品になります。県内では、業務用とお土産用に麺を卸しています。業務用というのは、ラーメン屋さんとか居酒屋向けです。お土産用は出雲大社など、観光地にあるお土産屋に卸しています。

―県外向けのOEMが多いんですね。

そうです。でも最近では自社製品を増やしています。実は2020年の4月から、食品表示法が変わり、商品のパッケージやシールに販売者と製造者の両方の明記が必要になります。以前はOEMの商品の場合、うちの名前は表記されなかったんですが、今後は製造者として出雲たかはしの名前が明記されます。

そうすると、消費者の方も「この麺は出雲たかはしの麺だったんだ。ちょっと検索してみよう」って気づいてもらえるようになるんです。会社名が知られることで、通販やHPにアクセスしてもらえる機会が増えると思うので、今から自社製品のラインナップを増やしています。

―今後の展開が楽しみですね。では、次に高橋さんについて聞かせてください。現在3代目ということですが、会社を継がれたきっかけを教えてください。

昔から継がなくてはいけないとプレッシャーを感じていたんですが、正直継ぎたいとは全く思っていませんでした。そんな気持ちもあって、高校卒業後はここから離れたいって気持ちが強かったですね。それで島根を離れて東京にある外国語の専門学校に通い始めました。当時、英語の勉強をしながら新宿でDJをしていたので、将来は音楽の道に進みたいなと思っていたんです。

―全く違う道に進んでいたんですね。

会社を継ごうと決心したのは電車のつり広告がきっかけです。ちょうど音楽関係のことがうまくいかず落ち込んでいた時でした。電車に乗ったら、つり広告が全部島根だったんです。日御碕灯台とか、出雲大社とか松江城が目の前の広告に写っていて、ふと「帰りたいな」って思ったんです。母親が仕事で忙しいのも知っていたので、とりあえず一旦帰って手伝ってみよう。そんな軽い気持ちで20歳の時に会社に戻ってきました。

―そのまま入社されたんですか?

そうです。でも入ってからが大変でした。入社して10日後に、いきなり中国の天津にあるそば茶の焙煎工場に行かされました。そして、戻ってきてからは麺と関係ない会社の立て直しを任せられ、クレームの対応したり、受発注の管理と実務を全てこなしていました。それから23歳になってようやく出雲たかはしに戻ってきたんです。

そこで1年間、麺の製造や営業をやって、24歳の時にいきなり「はい、社長交代!」と言われて社長に就任したんです(笑)



―展開が早いですね。

びっくりしましたね。しかも社長の仕事って何をすればいいか全く分からない。そんな戸惑っている僕に、当時の工場長が「大ちゃん、何もわからんでしょ?でも俺らがおるけん、大丈夫。俺らがサポートするし、分からんことあったら何でも言って」と声をかけてくれて、ものすごく救われました。

それから分からないことがあったらなんでも相談するようにしました。自分に能力がなければ、誰かを頼るしかないんです。

頼ることで色々な知識も教えてもらえるし、感謝の気持ちが生まれる。独りよがりにならず、人を信頼し、頼れるところは頼る。そして自分の考えていることをしっかりと社員に伝え共有する。そういった社長として必要なものは、この時に身につけられたんだと思います。

―工場長かっこいいですね。そこから事業は順風満帆だったんですか?

いや、私が社長になってから失敗の連続でした。就任以降、麺の製造原価やコストのこともあって事業の改革を進めたんですが、商品を一新することで取引がなくなってしまった企業もたくさんもあります。どんどん売り上げも下がってしまって、7年くらいはかなりしんどかったです。

―そこからどうやって盛り返したんですか?

いろんな人を頼って、相談することにしました。そこで、当時は島根県での売り上げがほとんどだったんですが、これからは生産拡大も兼ねて県外に出荷していこうという話になったんです。

県外進出のために、まずはお客さんの感想を直接聞こうと思い通販を始めました。私自身、ある程度の評価はもらえるだろうと思っていたんですが、実際始めてみると「まずい」というクレームが大量に来ましたね(笑)

―美味しくなかったんですね(笑)

電話をかけてくるくらいですから、相当まずかったんでしょう。

当時は原価を削って、安さ重視で製造していたんです。そこから原価がどれだけかかってもいいから、ちゃんと美味しいものを作ろうと方針を変えました。最初は高いという理由で売れなかったんですが、諦めず続けて行く中で、次第に「これ美味しいね」って言ってくれることが少しずつ増えてきたんです。そこから7年かけてお客様から「感動した」って言ってもらえる会社にまで成長しました。

―どのようにして質を向上させていったんですか?

もともとOEMでいろんな麺を製造していたので高い技術は持っていたんです。その技術を活かし、加工方法と原材料にお金と手間をかけて研究重ねました。しかし、どうしても原価が高くなるので、パッケージやパンフレットの写真は全て自社で撮影編集するなど、コストカットをしていましたね。



―出雲たかはしの強みはどこだと思いますか?

お客さんからの「こうしてほしい」というニーズに細かく応えられるのが強みです。うちは加工技術も高いので、うちでしか製造できない麺って結構あるんです。それと、うちは小ロット多品種なのでオーダーメイドに対応しやすいんです。

―なるほど。大量生産しないからこそ、いろいろな要望に対応できるんですね。

そう、クイックに対応ができるのが強みですね。それと商品に関しては、利便性を大切にしています。うちの麺は常温でも60日くらいは日持ちするんです。冷蔵庫を占有しなくていいし、車で長時間移動していても、すぐに傷んだりはしません。

利便性の代表格、インスタント麺も作っています。これは無添加、フリーズドライ製法にこだわった当社独自開発のインスタント麺で、ミシュラン三ツ星の超一流料亭にも認められています。



―ミシュランも認めるインスタント麺、すごく食べてみたいです。HPを見ていると「挑戦を続ける」というメッセージが書かれていますが、従業員には、そういった姿勢を求めていますか?

やはり意見を出してほしいです。社員は消費者でもあるので、消費者目線で意見を出してもらえると嬉しいですね。意見を出してほしいっていうと、萎縮してしまうかもしれないけど、うちは日頃から商品の試食をみんなでしています。その場で、味や値段を話し合っているので意見も言いやすい環境だと思います。

―他に従業員に求めることや、入社する上で大切なことがあれば教えてください。

麺への愛がある人がいいですね。麺が好きだからこそ「こんな麺が作りたい」といったアイデアが生まれると思うので。

あと最近では、ITの活用や、効率化を進めているので、そこに興味がある人にも来て欲しいです。それから、うちはずっと商品の情報発信を積極的にしていなかったので、もっと魅力発信にコストと時間をかけようと思っています。ブランディング、マーケティングに興味があってクリエィティブな仕事がしたい人も募集しています。

「美味しかった」の連鎖がファンを作る