株式会社 キューサイファーム島根

島根県 益田市

安心安全への情熱

代表取締役社長 廣田英二さん

「まず~い、もう一杯!」のCMで一世を風靡したキューサイの青汁。その原料であるケールの栽培をしているのが今回紹介する株式会社キューサイファーム島根です。本社がある島根県益田市の農場に伺ってみると、広大な土地が広がりとても気持ちが良い場所でした。長年愛されるヒット商品を支えるキューサイファーム島根。どんな想いを持って働いているのか、代表取締役社長の廣田さんに伺いました。


 

—株式会社キューサイファーム島根の事業内容を教えてください。

私たちの会社は、スキンケア・ヘルスケア用品の販売をしているキューサイ株式会社のグループ企業です。主にキューサイのケール青汁を製造するために、畑でケールを栽培して、工場で青汁を生産しています。最初はケールの畑からスタートして、2000年に青汁の冷凍工場を立ち上げています。2008年には粉末青汁を製造するための乾燥工場も立ち上げました。設立当初から現在に至るまで、農薬化学肥料不使用といった栽培方法でケールを育て、自然にも体にも優しい製品をこの場所で作っています。

 

—ケールってあまり耳にしたことがない野菜ですがどんなものなんでしょうか?

ケールはキャベツの原種にあたります。食物繊維やカルシウム、ビタミンといった栄養素が豊富で青汁の材料としてはよく使われているんですよ。

 

—島根に工場を展開することを選んだのは、島根がケール栽培に向いているからなんでしょうか?

当時、青汁を作るなら栽培方法にもしっかりとこだわったものを作ろうと考えていて、自社で畑と工場を構えるために、全国の土地を探していく中でこの島根が選ばれたんです。ケールの栽培に適した気温が15℃から20℃。益田市は冬でも比較的温暖なのでケールの栽培には向いていました。

ただ、ケールは暑さに弱いので夏の期間は栽培できません。ここの畑では11月から翌年の夏に入る前までの間に作付けと収穫をしています。春先は気温が上がるので、標高の高い山の方の畑で栽培するなど、なるべく長く収穫期間を設けられるよう工夫しています。

当然、ケールが取れなければ工場は稼働できないので、生産部門はそれに合わせて働いています。夏の時期、7月から10月の間は工場の稼働がないので、社員が機械を分解してメンテナンスをしています。

 

—夏に栽培が出来ないのは意外ですね。島根では現在、どれくらいのケールを栽培しているんですか?

自社農場のサイズは51ヘクタールあります。東京ドーム11個分と同じサイズです。ケール栽培を秋冬作と春作の2作で行なっていますが、合わせて約1000トンものケールを栽培していることになります。農場ではケールの収穫作業を30人程度が手作業で行なっていて、1日最大12トン収穫するときもありますね。これほどの規模でケール栽培を行っている会社は他にないので、日本最大級と言っても過言ではありません。

 

—すごい量ですね。これから農業でも機械化が進んでいる事例をよく耳にしますが、そういった効率化に取り組まれていますか?

ケールの収穫に関して、機械メーカーさんと話し合いながら機械化の検討はしていますが、なかなか難しいですね。私たちは安心安全な製品を作るために農薬や化学肥料を使用せずに栽培していて、収穫時にも厳格なルールのもと収穫しているんです。葉っぱの病気基準や5割以上虫食いされたものは収穫しないなど、基準を満たしたケールしか収穫しません。どうしても人の目で確認しながら選別をする必要があるので、機械にすべて任せるっていうのは難しいですね。

 

―近年注目の集まっているSDGsについて、取り組んでいることはありますか?

当社ではSDGsが普及する前から、食品廃棄物ゼロに向けた循環型農業に取り組んできました。近隣の牧場と連携し、製造工程で発生するケールの絞りカスを牛の飼料として提供しています。提供するケールの量は年間で約400t程度です。牛の糞は当社のケール畑で堆肥として活用しています。

また、2023年からは工場で機械に残った細かなケールの残りや、飼料としても再利用できないケールの残さを堆肥にするための機械を購入しました。廃棄物ゼロ実現に向け、これからも様々な取り組みを展開する予定です。

他にも、食育活動の一環として、学校の給食用にケールの提供も行っています。

 

―今後のビジョンを教えてください。

2021年に親会社がユーグレナ社に変わったことをきっかけに、当社では以前からの課題であった原価の改善プロジェクトとして効率的な生産体制の構築などに取り組んでいます。

プロジェクトの一環として、生産性の向上・雇用の安定化を目指し、今後は年間を通したケールに取り組む予定です。現在、当社で栽培しているケールは耐寒性の強い品種で作っているため、夏の間はケールの栽培や工場の操業ができないという課題がありました。その問題を解決するために、暑さに強いケールの栽培や、品種改良に取り組んでいます。現状実験段階ではありますが、将来的に通年栽培を実現したいです。

 

—では次に、働く従業員に関して教えてください。従業員の方にはどのように成長してほしいと考えていますか?

自分で考える力を強く育ててほしいと思っています。指示されて動くだけじゃなく、自分からこうしたいんです、これがやりたいんです、と能動的に動ける人材になってほしいですね。もちろん、工場での作業は決まった工程があるので指示通りに動かなければならない点もあります。でもそういった中でも、工夫をしてどんどん働きやすい環境や効率を良くするための意見を出せるような社員の姿が理想ですね。

 

—実際に声を上げた時にはそれを取り入れる体制は整っているんですか?

もちろんです。現場で働く社員が楽しく、効率良く仕事に取り組めるのが一番だと考えています。経営陣が現場の意見を大切にしなければ、働く環境は良くなりませんから。積極的に現場の意見は採用していくようにしています。

 

—キューサイファーム島根では新入社員に対する研修制度などはありますか?

入社後はまず、福岡にあるキューサイ本社で1ヶ月程度の研修があります。本社での研修では製造以外にも、営業など様々な経験をしてもらいます。生産から販売までキューサイが行う事業への理解を深めてもらった上で島根に配属します。

また、配属後もスキルアップのための通信教育が用意されていますし、費用も会社が負担するので未経験の方でも成長しやすい環境は整っています。

 

―入社後もしっかりと会社側がフォローしてくれるんですね。若手採用に力を入れているとお聞きしましたが、採用の課題について教えてください。

当社では農場、工場ともに、リーダー層の高齢化が進んでいます。そのため、次世代のリーダーになり得る若手採用が急務です。また、人材不足を背景に、外国人技能実習生の受け入れ、障がい者雇用についても力を入れています。

 

―多様な人材が活躍できる職場づくりを進めているんですね。

障がい者雇用では現在7名の方が、農場・工場で活躍しています。障がいを持った方でも働きやすい環境づくりとして、指導方法や掲示物をわかりやすいものに変えるなど、細かなところまで気配りするようにしています。そうした取り組みが評価され、2021年には益田市で初めて「障害者雇用に関する優良な中小事業主(もにす認定)」にも認定されました。

 

―新入社員に対して周りの社員の雰囲気はどうですか?

パートで作業してもらっている方はおじいちゃんおばあちゃんが多いので、新入社員が入ってくると孫のように非常に可愛がられています。若い子がいると職場に活力が生まれますし、先輩社員も新入社員と話ができるのがとても楽しいようで、職場の雰囲気はとても明るくなっていますね。

 

―周りが快く受け入れてくれるのは新しい環境で緊張してしまう方でもすぐに打ち解けられそうですね。実際に企業説明会などで就活生にアピールしている時にはどんなリアクションが多いですか?

意外にも、男性よりも女性の方が農業をやりたいと話を聞きにくる人が多いですね。実際に新卒の女性も多く入社されてます。

 

どんな人に入社して欲しいですか?

当社は創業して20年以上経ちましたが、栽培方法や工場の生産効率において、課題も残っています。これから入社される方にはそうした課題解決に主体的に取り組んで欲しいです。失敗を恐れずに、最後までやりきった先に達成感があるので、モチベーション高く仕事を頑張ってもらいたいと思っています。

 

最後に、キューサイファーム島根の魅力を教えてください。

農業という仕事は自然を相手にするので、計画通りにいかないことも多いです。台風で被害を受けたり、悪天候でケールが育たなかったりと様々なリスクがあります。ただ、そのリスクについてどう対処すべきか考え、行動し、苦労した末に収穫できる喜びはひとしおです。

また、キューサイファーム島根は広大な畑を持っていますので、大規模な農業を経験したいという方にとっては、このスケールの大きさはとても魅力的だと思います。ぜひ、農場を見学に来てみてください。広大な土地で太陽を浴びながら働くのはとても清々しいですよ。

何百トンものケールを青汁に変える、スケールの大きい仕事