松江市で配電盤の企画設計・製造をオーダーメイドで行う総合メーカー「株式会社太陽電機製作所」。
今回は2023年8月から、4代目の代表取締役社長に就任された宮内さんに、会社の強み・魅力、人材育成の方針などを伺いました。
次世代の採用・育成に力を入れることで、若い組織に生まれ変わった太陽電機製作所が、どんなビジョンを描き、進んでいくのか。
このインタビューを通してその片鱗を垣間見ることができました。
―太陽電機製作所の事業概要を教えてください。
当社は学校や病院、商業施設、市役所庁舎など、大規模施設の受配電設備、制御盤、分電盤を製作している配電盤の総合メーカーです。創業は1952年で創立70年を超えました。最初はモーターの修理などを行う工場からスタートしましたが、そこから時代背景に合わせて、配電盤等の製造を始め、現在に至ります。
―配電盤や分電盤とはどういった装置ですか?
配電盤や分電盤といった装置は電気の通っている建物ならば必ず設置されています。配電盤は、外部から建物へと電気を取り込む装置、分電盤は電気を建物内に巡らせる機能と、トラブル時には電気を自動的に止めて安全を守る機能を持った装置、制御盤は建物内の空調などの設備を制御・操作するための装置です。それぞれの装置を目にする機会は少ないと思いますが、生活に欠かせない電気を陰から守り、みなさんの生活を支えている重要なものなんですよ。
当社では、そうした配電盤等の装置を、営業から企画設計、製造、検査まで、全ての業務を一貫して対応しており、お客様それぞれのニーズに合わせたオーダーメイドの「一点もの」を製造しています。
―配電盤等の装置をオーダーメイドで製造することは珍しいのでしょうか。
オーダーメイドではなく、汎用品の配電盤等を使用している建物の方が多いです。例えばみなさまのご自宅にあるブレーカーは分電盤の一種ですが、汎用品が使用されています。他にも全国展開しているチェーン店など、電気の容量や回線の引き方が決まっている建物は汎用品が使われていますね。
しかし、私たちの製品を導入する市役所や病院といった大型設備の場合、必要な電気の容量や、回線の引き方が建物によって違うので、配電盤等の装置は汎用品ではなく、オーダーメイドで製造する必要があります。当社と同じようにオーダーメイドの製造を行なっている企業は県内でも3社しかありません。
―県内でも独自性が高い仕事をされているんですね。配電盤製造に関わる業務を一貫して対応しているとのことですが、それぞれの仕事について教えてください。
まず、営業・企画設計の部署ではお客様からニーズを伺い、設備の規模、重要性などを考慮した上で、各装置の機能やサイズ等をご提案します。設計の際はコンピュータで設計を行うCADシステムを活用し、設計図のデジタル化を実現しています。デジタル化することで、各部門に情報を的確かつスピーディーに提供できるようになり、正確な情報を共有することができます。営業・企画設計は、当社の「ものづくり」を支える重要な業務です。
次に自社工場で製造を行いますが、製造工程は板金、塗装、配電の3つに分かれます。金属を加工する板金では設備のネットワーク化を進めており、作業工程の短縮・効率化、多品種・少ロットの製品作りを実現しています。塗装は板金の工程で製作された製品の耐久性を高めるために必要な工程です。当社では製品の使用環境を配慮して適切な塗装を行い、お客様が要望される色・艶・厚みを実現します。配電は電気の巡る配線を組立てる作業ですが、自動化が難しく人の技術・技能が製品の良し悪しに大きくかかわってくる部門です。当社では経験豊富な社員がその技量を活かして対応しています。
最後に品質管理です。営業、企画設計から各製造工程の全プロセスを保証し、完成品検査で検証評価を行っています。当社は品質マネジメントの国際標準規格IS09001の認証を取得し、徹底した品質管理を行なっており、お客様から高い信頼を頂いています。
―様々な部門の仕事によって一つの製品が出来上がるんですね。次に、会社の強みを教えてください。
やはり、営業から設計、製造、検査まで全てを一貫して行えること、そして創業70年を超える歴史の中で培われた高度な技術力、ノウハウ、徹底した品質管理体制が強みです。取引先からも高い評価を得ており、「お客様から太陽電機製作所はいいものを作る」、「複雑な設計も高い技術力でしっかり対応できる」といったお声をいただいています。
また、若手社員が多いという点、人材育成に力を入れている点も、当社の強みです。
―若い方が多いんですね。世代構成や平均年齢について教えてください。
社員の平均年齢は39.3歳です。その中でも20代が1番多いですね。どこの企業でもそうですが、数年前までは団塊の世代やバブル期に入社した世代が在籍者数として一番多かったです。その後の就職氷河期と言われる時期はみなさん採用ができていないので、社内の年齢構成は50代60代のベテランが多く、30代40代の中堅と、それ以下の若手が少ない状況でした。
しかし、数年前から在籍数の多いベテラン世代が定年退職の時期に差し掛かり、将来の人材不足が目に見えていました。そこで近年は若手採用に力を入れています。直近では2022年度に新卒4名、中途3名、2023年度は新卒4名、中途4名の方に入社してもらえました。こうした社員の世代交代があって、若手が増えています。
また、女性社員の比率も上がっており、総務や営業から設計まで、各々が自身の適性を活かしながら活躍しています。
―人材育成制度についても教えてください。
社員には入社後、3ヶ月間はジョブローテーションで社内の全部署を経験してもらい、会社の全体感やそれぞれの業務の役割、重要性について学んでもらいます。資格取得の支援としては、資格取得に向けた社内勉強会や、受験料の会社負担、資格に応じた手当ての支給も行なっています。手厚い支援を行なっているので、同じ規模の他社と比較しても、資格取得者は多いです。
また、社員には自己研鑽を推奨しており、外部の研修も積極的に参加してもらっています。最近では一年目社員に、県外の工場視察、業界団体等の若手向けの研修に参加してもらいました。
このように、当社では会社の全体像を知るジョブローテーションの仕組み、個人のスキルを伸ばすための豊富な支援策を人材育成制度として導入しています。その根幹にあるのが当社の経営理念である「大局着眼 小局着手」という言葉です。
―「大局着眼 小局着手」とは、どのような意味ですか?
「大局着眼 小局着手」とは、「全体の状況を俯瞰的に見ながら、目の前の小さいことを細心の注意を払って実践する」という意味です。太陽電機製作所の創業者が大切にしていた言葉であり、今も当社の指針になっています。
私も社員にはこの経営理念を自分なりに解釈して、会社全体の目標や仕事の納期といった全体感を意識しながら、目の前にある自分の仕事に一生懸命取り組んで欲しいと言っています。
―この言葉が、創業以来、太陽電機製作所の躍進を支えてきたんですね。次に会社として課題などはありますか?
若手が増えている一方、技術の承継が課題となっています。当社はオーダーメイドで製造することを強みとしている会社だからこそ、工場のラインに部品が流れてきて、マニュアル通りに組み立てれば完成するといったような作業はありません。案件ごとに完成品が違うので、やはりものづくりの経験が重要となってきます。現在ベテラン社員が減り、若手が増えているので、経験不足による生産性の低下などは課題です。
しかし、焦ってどうにかなる問題ではないので、若手社員にはしっかりと成長してもらえれば問題ありません。その分、作業環境の整備や工程の見直し、円滑なコミュニケーションが取れる関係性の構築を経営陣として整備し、品質と生産性の向上を目指しています。
―ありがとうございます。次に、求職者に伝えたい会社の魅力を教えてください。
若い人が多いので活気もありますし、社員同士の仲も良いので、和気藹々とした温かい環境で働けることが当社の魅力です。休み時間には若手が中心となって、仲良く過ごしている姿をよく見かけます。製造業は自分の持ち場で黙々と作業を行うイメージが強いと思いますが、当社では就業中も互いに質問し合うなど、活発なコミュニケーションが行われています。中途採用などで会社見学に来られた方が、若手の多さに驚くことも多いです。ベテラン社員からも、若手社員が増えて会社の雰囲気が良くなったという声が上がっています。
―これから入社される方でも同年代が多く、働きやすい環境なんですね。仕事内容は理系のイメージがありますが、採用条件に学部等に制限はありますか?
制限はありません。高卒大卒ともに募集していますし、文系の方も歓迎しています。2023年度に大卒で入社した新入社員はともに文系学部出身です。文系の方は営業等の業務に、理系や工業・高専卒生は製造に携わる部門で活躍してもらいます。文系の方でも、入社後にやる気を持って勉強してもらえば製造に携わることも可能です。
―幅広く募集されているということですね。最後に、どんな人に入社して欲しいですか?
明るく元気で周りと協調できる人。向上心を持って前向きな思考の人。この2点を重視しています。当社は組織としても若返り、次世代の太陽電機製作所として躍進するための下地が整った段階です。今後は、若手の皆さんにしっかりとスキルを磨いてもらい、その力を存分に振るってもらうことでさらなる成長を目指していきます。その上で、新しく入る皆さんの力に大いに期待しています。しっかりと皆さんが成長できるようサポートしますので、明るく元気に、仲間と協力しながら、成長の日々を楽しんでください。